婚姻費用の分担請求を払わないなら
調停・審判・強制執行!
婚姻費用を一旦決めたとしても、それが未払いであった場合、もしその取り決めが単なる当事者間の協議である場合には、直ちに婚姻費用を請求する調停を申し立てた方がいいです。
なぜなら、婚姻費用をきちんと支払ってもらうことについて、裁判所は調停の申し立ての日を基準に考えているからです。
調停を申し立ててから、実際に婚姻費用の金額が決まるまでには、早くても3ヵ月あるいは半年くらいの期間が必要になります。その時に、いつから婚姻費用を支払わなければならないのかというと、調停の申し立てをした月からということになっています。
ですから、未払いの婚姻費用をできるだけ少なくするためには、別居したらすぐに婚姻費用の調停を申し立てる必要があるのです。
では、未払いの婚姻費用はどうなるのかというと、すでに調停を申し立てる前に夫婦間で約束をしている場合には、それは支払ってもらうということは可能なのですが、現実的にはなかなか難しいです。
なので、前述のとおり、別居したらすぐに調停という形式できちんと請求をしておくことが重要になります。
婚姻費用とは?
分担請求を払わないなら調停審判強制執行?
婚姻費用というのは、夫婦の結婚生活を維持するために必要な費用のことをいいます。要するに、普通の日常生活を送るために必要な生活費のことです。
例えば、衣食住にかかる費用や医療費、子供の教育費や学費、養育費、交際費など、生活していくために必要なお金です。夫婦である以上は、もちろん別居していても、収入の少ない方が収入の多い方に生活費を請求することができるのです。
このように、通常は別居した時に問題になることが多いです。
また、同居していても生活費を渡さない人がいますので、同居している場合でも当然請求することができます。さらに、お互いが生活費を分担し合わないといけないので、たとえ離婚協議中であっても、婚姻費用は請求できます。
ただし、婚姻費用の金額や支払い方法などについては、法律によって具体的に決められいるわけではありません。
ではどうやって決まるのかというと…
基本的には夫婦の話し合いによって自由に決めることができるのです。ただ、話し合いが決裂したとか、まとまらなかった場合には、家庭裁判所に対して「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てることができます。
要は調停で、調停は話し合いですから、調停委員を間に入れて金額を決めていくことになります。そして、金額が決まれば、当然その金額をその後請求できるようになります。
ただし、調停でも全く話し合いがつかないとか、決裂してしまった場合は、審判に移行してそこで金額を決定していきます。
夫婦の年収や子供の人数、年齢などを総合的に考慮して決定していくのですが、実際には「婚姻費用算定表」を基準にして話し合いが進められることが多いです。
ちなみに、婚姻費用算定表には、「だいたい年収どれくらいで子供が何人いる人は毎月これくらいになります」というようなことが記載されています。
なので、婚姻費用算定表を見えば、自分がいくらくらい請求できるのかがわかります。つまり、不公平にならないように、婚姻費用算定表をもとにして金額が決められていくということです。
それから、例えば、妻が不貞行為(不倫)をしてから子供を連れて別居状態になってしまったというケースです。この場合、不倫をした妻は婚姻費用を夫に請求できるのでしょうか?
これについては、平成17年の判例があって、その場合は夫は婚姻費用を支払う必要はないということでした。ただし、未成年の子を連れて妻が出て行った場合には、子供の養育費として婚姻費用を請求できるという判例もあります。
なので、未成年の子供と一緒に出て行った場合は、子供の分は請求できることになります。つまり、子供には罪はないということで、子供の生活費に相当する金額は支払われるということです。
分担請求をしても払わない夫から
婚姻費用をもらう方法とは?
妻が子供を連れて実家に戻っていて、夫が生活費を入れてくれない場合、どうすればもらえるのでしょうか?
原則として、たとえ別居していても夫婦である以上は、生活費の支払いを請求することができます。
例えば、夫婦で離婚を前提とした話し合いをする際に、妻が子供を連れて実家に帰った場合であっても、夫は妻と子供の生活費を夫婦双方の年収に応じて負担する義務があります。ちなみに、この費用のことを婚姻費用といいます。
この金額については、妻と子供が夫と同じ生活を送ることができる程度の金額ということになります。また、この婚姻費用の中には、妻と子供の通常の衣食住の生活費や、医療費、教育費なども含まれます。
では、婚姻費用を請求していても、相手が全く支払ってくれない場合はどうしたよいのでしょうか?
その場合は、まずは弁護士を代理人として立てて、書面で請求して支払いを促すという方法があります。当事者同士ではなかなか支払ってくれないケースでも、弁護士からの書面が届くと多くの場合、婚姻費用を支払うようになるようです。
ただし、それでも支払ってもらえない場合は、家庭裁判所の手続きを利用する、つまり、調停の申立てを行うことになります。婚姻費用の調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
調停の結果、婚姻費用の支払いについて合意が成立し、調書が作成された後、相手からの支払いがない場合には、その調書をもって、例えば、相手方の給料を差し押さえるなどの強制執行を行うこともできます。
ただ、婚姻費用の調停で合意が成立しない場合は、調停そのものは不成立になるのですが、調停の申立時に審判の申立てがあったものとみなされて、そのまま審判手続きに移行します。なので、調停と別に審判の申立てをする必要はありません。
この審判というのは、家庭裁判所の裁判官が、婚姻費用の適正額を決定するというものです。審判によって適正額が決まった場合も、調停で合意が成立した場合と同じで、もし相手方が支払ってくれない場合は、強制執行を行うことができます。
過去の婚姻費用をもらう方法とは?
婚姻費用というのは、結婚した夫婦が日常生活をするために必要な生活費のことです。例えば、衣食住にかかる費用だったり、医療費や子供の教育費など、そういた諸々の生活するための生活費です。
これは、夫婦が別居した時に問題になるケースが多いです。なぜなら、別居した後に生活費を渡さないことが多いからです。
ですが、法律上は、夫婦は協力しなければいけないことになっています。なので、別居した場合でも、収入の少ない方は多い方に生活費である婚姻費用を請求することができます。婚姻費用は、まずは夫婦の話し合いで決まります。
ただ、ここで問題があります..
例えば、一緒に住んでいた夫が別居を始めて家を出て行ったとします。別居を始めた当初は、婚姻費用を請求できるというのを知らなくて、あるいは知っていても請求しなかった場合、その1年後に婚姻費用を請求したとします。
そして、夫が承諾して支払ってもらえることになった場合、過去の1年分についてももらうことはできるのでしょうか?
実は、過去の婚姻費用を請求できるのかというのは、色々と見解や判例が分れていてます。これについては、昭和40年の最高裁判例で「過去の費用も請求できないわけじゃない」と言っています。つまり、請求できる可能性を残しているのです。
ですが、一般的な見解や判例では「婚姻費用を請求した時からもらえる」とされています。
なので、別居して1年後に夫に婚姻費用を請求する時に「今まで私は我慢していたので、過去1年分の婚姻費用もください」と言って、それで夫が「わかった」となれば、それは理想的な形といえます。
ただ、過去の婚姻費用について、夫がすんなりと承諾することはまずありません。そういう場合は、話し合いで決着がつきませんので、婚姻費用の分担請求という調停ができるのですが、そこでは先ほどの「請求した時からもらえる」というように判断されます。
ですから、過去1年分についても婚姻費用を請求する場合は、1年前から請求していたことを証明しなければなりません。
どうやって証明するの?
ただ、1年前から請求していた証拠なんてそうありませんよね。例えば、電話の通話記録も難しいでしょうし、メールの送信履歴があったとしても、相手方に「見ていなかった」と言い逃れされればそれまでです。
では、どうやって1年前に婚姻費用を請求していたことを証明できるのかというと、「内容証明郵便」がベストになります。内容証明郵便なら、あなたがいつ配偶者に対して婚姻費用を請求していたということを公的に証明してくれます。
内容証明というのは、請求した日時も証明できるので、これなら1年前にあなたが婚姻費用を請求していた証拠になるのです。ですから、まだ別居をしていない場合は、別居したら直ちに内容証明で婚姻費用を請求するようにして下さい。
すでに別居している場合は、できるだけ早めに内容証明を送るようにして下さい。そうすれば、少なくともそれ以後の婚姻費用はもらえるようになります。
ただ、内容証明を送っていなくて、すでに婚姻費用分担請求の調停をしている場合は、「過去の分の請求が認められないのであれば、今後の婚姻費用の金額を決定する要因に、過去もらえなかった未払い分も考慮して決定して下さい」」と主張してみて下さい。
本来は7万円かもしれないですが、1年間もらえなかったのでその分を考慮して、例えば、9万円にしてもらうといったことです。
先ほど述べた通り、判例でも請求できる可能性が残されていますので、堂々と請求してみて下さい。100%でなくても多少は考慮してくれるはずです。
離婚した場合は?
実は過去の婚姻費用をもらう方法はもう1つあります。それは離婚した場合になるのですが…
離婚の協議や調停の手続きで財産分与を算定していきますが、その財産分与を算定する時に、「私は過去の婚姻費用を100万円分もらっていないので、その分を上乗せしてください」と請求していく方法です。
財産分与というのは、一切の事情を考慮して決定されるということになっています。つまり、その一切の事情の中に、もらえなかった婚姻費用も当然含まれるるのです。
なので、当然考慮されるはずです。もし過去にもらえなかった婚姻費用があるのなら、離婚後の財産分与の時にその分を上乗せしてもらうようにして下さい。これで実質的には、過去の婚姻費用をもらっているのと同じになります。
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