事例で検討
敷金の返還条件は、次のようになっています。
『第○○条 貸主に正当な事由が生じて賃貸借契約を解除する場合には、貸主は敷金の全額を返還する。 第○○条 前条以外の場合には契約終了の際、敷金の90%を返還する。 』
この場合、敷金の返還を要しない部分の金額が確定するのは、契約終了の時と考えてよいのでしょうか?
私の場合は
どうしたらよいでしょうか?
ご質問のような場合は、現段階において確定できる返還を要しない敷金は、後の一条によって、敷金10%と考えられます。ですから、その金額を契約年の不動産所得の収入金額に含めます。
もし、貸主の方から契約を解除するようなことになったら、そのときに、敷金の10%を借家人への損害賠償金として、貸主があらためて支払ったものと考えます。これは、他の立退料とともに、貸主の不動産所得の計算をする上で必要経費になります。
なぜ、このような処理になるのですか?
約定の前の一条は、貸主の方から解除を申し入れた場合に生ずる借家人の損害を、あらかじめ予定したものと考えられます。また、期間満了で必ず到来する終了原因とは違って、極めて偶発的、不確定なものといえます。
このような不確定な原因により起こる所得金額の変動は、その原因が発生した時の所得金額の変動としてとらえるのが妥当です。
よって、あらかじめそのような不確定要因を所得金額の計算要素にすることもしませんし、また、不確定要因が確定するまで課税標準の確定を待つこともできないからです。
貸主の側から立退きを
要求する場合はどうなりますか?
貸主によほどの事情がなければ、借家人に相当の立退料を支払うのが普通ですので、前の一条で返還する10%は、立退きの際に支払う立退料の予約ということもできます。