相続手続きの流れ|相続発生〜申告・納税までの手順!

 

 

相続手続き流れ

相続発生申告納税までの手順

 

 

今回は、相続が起きてから相続税を申告して納税するまでの一連の流れについてのお話です。

 

まず相続が発生してから相続税の申告・納税をするまでの期限は10ヶ月です。このように10ヶ月というタイムリミットが設定されているわけですが、相続手続きについては、その9割を相続人自身で行う必要があります。

 

比較的時間にゆとりのある人でも相続手続きを完了させるのは非常に骨が折れる作業になりますから、現役で仕事をされている方にとっては時間を確保するだけでも大変です。

 

そのような場合には役所関係の手続きを代行してもらえる会社もありますが、その分費用がかさんでしまいます。

 

それを考えると、やはりそういった費用はできるだけ抑えて自分で手続きを進めたいと思いますよね。

 

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とはいえ、あまりにも相続についての知識がないと、本来な一度で済むところ、何度も同じ場所に出向かなければならないといった負のサイクルに陥る可能性も高いです。

 

ですから、そのようなことを回避するためにも、相続についての最低限の知識を身につけ、スムーズに手続きを進めていくことが大切です。

 

実際に相続が起きると、どうしても緊急で重要な作業に手を取られてしまいますので、期限の10ヶ月などあっという間に経ってしまいます。時間に余裕を持つのは大変ですが、どのような手続きも一度で済ませ、スムーズに手続きを完了させるのが理想です。

 

 

大まかな相続手続きの手順は?

 

相続が発生してまず初めに取り掛かることは、死亡届の提出です。

 

次に、相続方法の決定をし遺言書の有無を確認します。また、法定相続人の調査をし相続財産の調査も行います。次に、遺産分割協議をし準確定申告を行い遺産分割協議書の作成を行います。最後に、相続税の申告・納税をしたら完了です。

 

以上の手続きを10ヶ月以内に完了させる必要があります。

 

この手続きの流れを見て大変そうと感じるかもしれませんが、この流れだけでも覚えておけば、知識ゼロの状態から始めるよりずっとスムーズに手続きを完了させることができるはずです。

 

 

死亡届の提出とは?

 

相続が発生してまず最初にやることは“死亡届の提出”です。

 

具体的には、まずは被相続人の死亡を知った日から7日以内に、国外で死亡した場合には3ヶ月以内に、死亡診断書あるいは死亡検案書、届出人のハンコを用意します。

 

そして、それを被相続人の本籍地または死亡した場所もしくは届出人の住所地、これらのうちいずれかの市区町村役場に提出します。

 

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ちなみに、死亡届の提出は24時間受付可能です。ただし、遺体を火葬するために必要となる火葬許可申請については、土日祝日・夜間は窓口が開いていませんので別の日に行わなければなりません。

 

なお、死亡届の提出は、葬儀会社が代行してくれるケースが多いです。なので、もし気になることがあれば葬儀会社の人に聞いてみることをおすすめします。

 

 

死亡診断書が必要になるケースとは?

 

生命保険金を取得する際には死亡診断書の提出が必要になります。なので、加入している生命保険会社に問い合わせをして、事前に必用となる枚数をコピーしておくと後々の時間短縮につながります。

 

ちなみに、生命保険会社によっては死亡診断書の原本の提出を求められるケースもあります。この際、死亡診断書の再発行すると5,000円以上の手数料がかかりますので注意してください。

 

このような場合には、わざわざ死亡診断書の再発行をしてもらわなくても、死亡届の写しである“死亡届記載事項証明書”を市区町村役場で請求すると、手数料300円前後で発行してもらえます。

 

ただ場合によっては、死亡診断書の提出ではなく、生命保険会社指定の書類に医師の証明を付けて返送を求められるケースもあります。

 

ですから、被相続人が加入している保険をすべて把握できているのであれば、生命保険会社それぞれに“何が必要となるのか”を問い合わせてみることをおすすめします。

 

なお、死亡届の提出と同時に、世帯主変更手続きや国民健康保険証、介護保険証、国民年金手帳、印鑑証明書、住基カードの返還なども同時に行うと時間の短縮になります。

 

何度も役所に出向くのは大変です。まとめてできる手続きにはどのようなものがあるのか、時間短縮のためにも事前に把握しておくようにしましょう。

 

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相続方法の決定とは・・・

 

さて、死亡届の提出が済んだら次にやるべきことは相続方法の決定です。この相続方法の決定は、相続手続きのうちでも一番期限に注意が必要な作業になります。

 

そして、被相続人の全財産(負債を含む)を相続する単純承認、反対に一切相続しない相続放棄、あるいは正の財産の中で負の財産を返済する限定承認、これらのうちからどれか1つを選択する必要があります。

 

ちなみに、限定承認というのは耳障りはいいですが、実際には被相続人の全財産を換価し、その中から債務返済に充てるというものなので、非常に作業は大変です。

 

なので、専門家に依頼しても快く引き受けてもらえない可能性が高いです。

 

一方で、限定承認の場合には、被相続人の死亡時に全財産を相続人に時価で譲渡したとみなされます。

 

例えば古くから所有している不動産などがある場合には、その財産には譲渡所得税が課税される可能性があります。よって、限定承認という相続方法は実際にはあまり用いられていません。

 

 

各相続方法の注意点は?

 

単純承認を選択する場合には特に手続きは不要ですが、相続放棄や限定承認を選択する場合には、相続発生後3ヶ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをしなければなりません。

 

また、相続放棄をするときは相続人が単独で申請することが可能ですが、限定承認をする場合には、全相続人の同意が必要になりますので注意していください。

 

ちなみに、3ヶ月の熟慮期間は伸長することが可能です。ですが、相続税の申告・納税期限は従来通り10ヶ月のままですから、できるだけ早期に相続方法を決断されることをおすすめします。

 

相続放棄や限定承認を検討している場合には、特に注意しておきたい点があります。それは、“被相続人の財産に手を付けてはいけない”ということです。

 

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被相続人の財産を使用・処分してしまったり、名義変更してしまったりすると、その時点で単純承認をしたとみなされてしまいます。つまり、相続放棄や限定承認が認められなくなるということです。

 

相続が起きると、葬儀や四十九日の準備などで初めの数ヶ月はあっという間に過ぎていきます。
ですから、時間に余裕のあるときに、相続人同士で相続方法をどのようにするのかを話し合っておくことをおすすめします。

 

 

遺言書の有無確認とは?

 

次にやるべき相続手続きは、遺言書の有無確認です。

 

人によっては、“相続方法の決定後に遺言書により多額の債務の存在を知った”という場合もあるかもしれません。ですから、相続方法の決定も遺言書の有無確認も3ヶ月以内にすることをおすすめします。

 

そして、遺言書がある場合は、その内容(遺産分割方法)に従って遺産分割協議を行います。一方、遺言書がない場合には、法定相続分に従い遺産分割協議を行います。

 

遺言書には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。遺言書を発見したら、まずはその遺言書がこれら3つのうちのどれに該当するのかを調べるようにしてください。

 

 

なぜ遺言書の種類を調べるの?

 

遺言書の種類を調べるのは、家庭裁判所での検認手続きが必要なのかどうかを調べるためです。

 

具体的には、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要になりますが、公正証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きは不要です。

 

つまり、公正証書遺言だけはその場で開封してもOKということです。この検認手続きの期間ですが、検認完了までには1〜2ヶ月かかります。

 

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自筆証書遺言とは?

 

自筆証書遺言というのは、財産目録も含めた全分を自筆で書いた遺言書のことを言います。この自筆証書遺言のメリットは、自分の好きなタイミングで費用をかけずに作成することができるということです。

 

ただその一方で、不備が見つかることも少なくありません。それにより多くの場合、遺言書が無効になってしまうケースがあるのがデメリットといえます。

 

 

公正証書遺言とは?

 

公正証書遺言というのは、まず遺言者が事前に考えた遺言書の内容を公証人に伝えて、公証人が遺言者から伝えられた内容で遺言書を作成します。

 

そして、遺言者と2人以上の証人の前で読み上げ、問題がなければ遺言者と証人が署名押印して作成される遺言書のことを言います。

 

公正証書遺言のメリットは・・・

 

作成した遺言書の原本は公証人役場に保管されますので、紛失・偽造の心配がありません。仮に遺言者に渡されるコピーを紛失したとしても再発行が可能です。

 

また、遺言書は公証人が書くので不備がないというのもメリットです。一方、デメリットとして、作成するための手数料が高いことがあります。

 

 

秘密証書遺言とは?

 

秘密証書遺言というのは、遺言者が作成した遺言書を公正証書役場に持参して、遺言書の内容を秘密にしたまま遺言書の存在のみを公証人に証明してもらう遺言書のことを言います。

 

ちなみに、この場合の手数料は11,000円の定額となっています。

 

なお、秘密証書遺言の場合、手間がかかる上に遺言書の内容まで確認してもらえないので、不備が見つかるケースも多々あります。そのため実際に利用する人はそれほど多くありません。

 

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法定相続人の調査とは?

 

さて、相続が起きて、死亡届の提出、相続方法の決定、遺言書の有無確認を3ヶ月以内に終えた後にやるべきことは、法定相続人の調査です。

 

「わざわざ相続人の調査などしなくても、相続人が誰になるのかなんてわかるよ!」と思われるかもしれません。ですが、相続人の調査は必ずやらなくてはなりません。

 

というのは、第三の相続人が現れる可能性があるからです。

 

例えば、被相続人(亡くなった人)に離婚歴があってその時の子供がいたり、誰にも知らせずに養子縁組をしていたり、といったような家族には積極的に知らせたくない事情を抱えているケースがあります。

 

このような事実を隠し通したまま相続が起きてしまう可能性があるのです。実際、相続人の調査をしたことにより第三の相続人の存在を知ったというケースは珍しいことではありません。

 

遺産分割協議というのは、相続人全員が参加しなければなりません。つまり、相続人が1人でも欠けた遺産分割協議は無効となってしまいますので、再度やり直すことになってしまうのです。

 

前述の事例のように、隠し子がいたり、養子がいたり、といったケースは当然のことながら、相続人と何年も疎遠になっている人に相続権がある場合でも同じことが言えます。

 

ということで、その相続人が相続放棄をしない限り、必ず全員が遺産分割協議に参加する必要があるのです。

 

 

法定相続人の調査方法は?

 

では、法定相続人の調査はどのように行えばよいのでしょうか?

 

法定相続人の調査をする上で、まずは亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集しなければなりません。

 

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戸籍なら亡くなった人が住んでいた役所に行けば簡単に取れそうに思われるかもしれません。ですが、人によっては、一見単純そうに見えるこの作業に大変な労力が必要になることもあります。

 

一般的に出生から死亡までの連続した戸籍が1通で済む確率はかなり低いです。なぜなら、戸籍法改正の度に戸籍は新しくなるからです。また、婚姻や転籍によっても戸籍は変わります。なので、実際には何通も戸籍を収集する必要が出てくるのです。

 

亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集するには、亡くなった人の死亡時の品籍地の役所で戸籍を受け取り、そこから出生時までの戸籍をさかのぼって調査していきます。

 

ちなみに、本籍地の役所では担当者に「出生から死亡までの連続した戸籍を取れるだけ取ってください」と伝えるだけで相続で必要だということがわかってもらえます。

 

そして、本籍地で戸籍謄本を受け取ったら、窓口に担当者に「次にどこの戸籍を取ればいいですか?」と聞くと教えてくれますので、この手順を繰り返して出生までの戸籍を取り寄せます。

 

なお、戸籍は郵送してもらうことも可能です。もし遠方まで出向くのが難しい場合はその役所に問い合わせてみることをおすすめします。

 

というように戸籍をすべて取り寄せることができたら、法定相続人となる人を確定させます。これで、法定相続人の調査は完了です。

 

 

相続財産の調査とは?

 

亡くなった人の“出生から死亡までの連続した戸籍を集めて法定相続人を確定させたら、今度は相続財産の調査を行います。

 

この相続財産は2種類あります。

 

1つは、現金や不動産など、亡くなった人が直接所有していた純粋な相続財産です。もう1つは、亡くなった人が直接所有していたわけではないけれど、死亡を原因として発生する“みなし相続財産”です。

 

ちなみに、みなし相続財産というのは、死亡保険金や死亡退職金のことです。

 

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みなし相続財産は、受け取った相続人固有の財産なので、遺産分割協議の対象とはなりません。つまり、その相続人が独り占めできるわけです。ただし、相続税の計算をする際には、このみなし相続財産も含めて行いますので注意が必要です。

 

ということで、相続財産の調査をする際には、純粋な相続財産とみなし相続財産の2つに分けて考える必要があります。

 

 

相続財産に申告漏れがあったら?

 

死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産については、申告漏れは多くありません。

 

これは、死亡保険金の場合には生命保険会社から受け取る保険証書があったり、死亡退職金の場合には亡くなった人が勤務していた会社から連絡があったりするからです。

 

一方、純粋な相続財産については問題も多いです。

 

相続財産の申告漏れがあると税務調査の対象になった際に、多額のペナルティを課される恐れがありますので注意してください。

 

相続財産というと、つい現金や不動産などのプラスの財産ばかりを考えてしまいますが、負債などのマイナスの財産もきちんと把握しておく必要があります。

 

ちなみに、代表的なプラスの財産としては、預貯金や不動産、有価証券、ゴルフ会員権、車、骨董品などがあります。また、相続人が相続時精算課税制度によって取得した財産や、相続開始3年以内に贈与された財産は相続財産とみなされます。

 

ですから、もしそのような財産がある場合には、これらについてもきちんと把握しておくようにしてください。

 

反対に、代表的なマイナスの財産としては、亡くなった人が残した借金や未払いの医療費などがあります。また、亡くなった人の葬儀費用も債務として計上することが可能です。

 

そして、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額をもとに相続税を計算していきます。

 

被相続人(亡くなった人)がどれだけの資産を持っているのか、これを隅々まで把握することは非常に大変です。残された遺族が困らないように、どのような財産がどれだけあるのかを明記した財産目録を作成しておくだけでも、家族の負担を軽減させることができます。

 

ということで、相続対策には関心があるけれど何から手を付ければいいのかわからないという場合には、まずは財産目録を作成することをおすすめします。

 

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遺産分割協議とは?

 

相続財産の調査が終わったら、次は遺産分割協議です。

 

遺産分割協議というのは、亡くなった人の遺産をどのように相続するのかを話し合うことを言います。また、遺産分割協議では、亡くなった人が遺言書を残しているかいないかで、話し合いの進めかたが変わってきます。

 

遺言書がある場合には、原則としてその遺言書に書かれている遺産分割方法に従って話し合いを進めていくことになります。

 

一方、遺言書がない場合には、亡くなった人の財産は、死亡と同時に、相続人の法定相続分に応じた共有状態となります。

 

例えば、相続人は亡くなった人の子供2人(A、B)のみで、相続財産が自宅不動産3,000万円、預貯金2,000万円だったケースを考えてみます。

 

この場合、自宅は1,500万円ずつ、預貯金は1,000万円ずつ、の共有状態になります。

 

よって、相続人Aと相続人Bの共有状態である相続財産をどちらが相続するのかを確定させ、共有状態を解消するために遺産分割協議をする必要があるのです。

 

仮に遺言書があったとしても、一部の財産しか分割方法が示されていない場合もあります。その場合は、それ以外の財産については遺産分割協議で話し合う必要があります。

 

ちなみに、遺産分割協議の終了後に遺言書が発見された場合には、再度遺産分割協議をやり直す必要があります。なので、遺品整理を行うときには、遺言書があるかどうかをきちんと確認するようにしてください。

 

 

遺言書どおりにしなくてもいいの?

 

とはいえ、遺言書がある場合には、“遺言書に示されている遺産分割方法に従って話し合いを進めていく”というのはあくまでも原則です。

 

ですから、相続人同士で話し合いがまとまるのであれば、自分たちで決めた遺産分割方法によって遺産分割協議を進めても何も問題ありません。

 

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ただし、民法で決められている最低限度の相続分である遺留分を侵害している遺産分割方法が遺言書、あるいは遺産分割協議で提示された場合には、遺留分の侵害を受けている相続人は遺留分相当額を取り戻すことが可能です。

 

なので、遺産分割協議では、遺留分に十分注意しながら進めることをおすすめします。

 

 

遺産分割協議がまとまらない場合は?

 

遺産分割協議というのは、あくまでも相続人同士の話し合いのことをいいます。なので、この遺産分割協議がまとまらない場合には、裁判所を交えて話し合いを行う遺産分割調停に進みます。

 

それでも決着がつかない場合には、裁判所に判断を委ねる遺産分割審判へと進んでいきます。

 

遺言書を残しておけば遺産分割方法を提示することが可能ですから、一から遺産分割協議をしなくても済みます。つまり、相続人の負担軽減になります。

 

遺産分割協議というのは、相続手続きに内でもたくさんの時間を費やすことになりますので、遺言書があればスムーズに遺産分割協議に取り掛かれるはずです。

 

 

準確定申告とは?

 

続いて、準確定申告を行います。

 

通常、所得税の確定申告というのは、1月1日から12月31日までの所得について、翌年の2月16日から3月15日までの間に申告する必要があります。

 

とはいえ、年の途中で亡くなった場合には、本人が自分で確定申告をすることはできませんよね。

 

そこで、相続人が亡くなった人(被相続人)の代わりに、1月1日から亡くなった日までに確定した所得について、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に確定申告および納税をすることになっているのです。

 

これが“準確定申告”と言われているものになります。つまり、準確定申告というのは、相続人が亡くなった人(被相続人)の代理で行う確定申告ということになります。

 

ただし、準確定申告はあくまでも代理で行っているだけですから、納税者は亡くなった人(被相続人)という取り扱いになります。

 

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準確定申告の対象者は?

 

準確定申告は亡くなった人(被相続人)全員が対象になるわけではありません。準確定申告が必要になるのは、亡くなった人(被相続人)が生前に自分で確定申告をしていたケースだけです。

 

具体的には、給与所得が2,000万円超の人、給与所得以外の所得が20万円超の人、2ヵ所以上から給与をもらっていた人、公的年金による収入が400万円超の人、などです。

 

それから、準確定申告により税金の還付を受けられるケースもあります。これに該当する人は、高額の医療費を支払っていた人、各種控除を受けた人、給与・年金だけの収入で源泉徴収の対象になっていた人、などです。

 

ちなみに、準確定申告は相続人全員で行う必要があり、各相続人が連署で準確定申告書を申告することになります。

 

なお、通常の確定申告と同じように、医療費控除や保険料の控除、配偶者控除や扶養控除の申請も準確定申告ですることが可能です。

 

 

準確定申告の注意点は?

 

前述の申請には色々な注意点があります。

 

まず医療費控除の対象範囲ですが、これは亡くなった人(被相続人)が死亡日までに支払った医療費だけです。ですから、亡くなった後に相続人が支払った医療費については準確定申告の対象とはなりません。

 

ただし、亡くなった人(被相続人)と生計を同じくしていた相続人が医療費を負担していたという場合には、その医療費については相続人の確定申告で医療費控除の対象になります。

 

また、保険料の控除は、亡くなった人(被相続人)が死亡日までに支払っていた金額のみが控除の対象となります。配偶者控除や扶養控除は、死亡日の状況によって適用できるかどうかの判断がなされます。

 

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準確定申告を忘れていたら?

 

準確定申告という用語自体、あまり聞く機会がありませんので、うっかり忘れていたということも考えられます。

 

相続においてはどのような手続きが必要になるのかを事前に把握しておくと、こうしたうっかりミスをしてしまう可能性が低くなります。相続手続きというのは相続人の手腕によりますから、できるだけ余裕をもって相続手続きが終えられるようにしたいものです。

 

 

遺産分割協議書の作成とは?

 

続いて、遺産分割協議書の作成です。

 

遺産分割協議書というのは、誰がどの財産を相続したのかなど、遺産分割協議の結果をまとめた書類のことを言います。この遺産分割協議書の作成は義務ではありませんので、仮に作成しなくても法律的には何も問題ありません。

 

ただ、遺産分割協議書の作成をしておかないと、後々相続人同士で「言った、言わない」のトラブルに発展する可能性があります。なので、こうしたトラブルを未然に防ぐためにも遺産分割協議書を作成しておくことをおすすめします。

 

また、遺産分割協議書の形式については特に決まりはありませんので、ご自身で作成することもできます。ただし、財産の一つ一つを正確に特定して書く必要がありますので、この点には注意してください。

 

 

遺産分割協議書は何通作成すればいいの?

 

遺産分割協議書は相続人の数だけ作成し、各自一通ずつ保管します。

 

ちなみに、遺産分割協議書の作成は義務ではないのは前述のとおりですが、相続登記の際には必要になります。具体的には、亡くなった人(被相続人)の所有不動産の名義変更を行う際には、遺産分割協議書の提出が義務付けられています。

 

ただし、法定相続分どおりの持ち分で相続登記を行う場合や、相続人が一人しかいない場合、遺言書どおりに不動産の相続を行う場合は、遺産分割協議書は不要です。

 

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つまり、これらの場合には、遺産分割協議書がなくても相続登記をすることができるということです。

 

ということで、上記のケースに該当する場合には、最初から遺産分割協議書を作成しないという判断をしてもOKです。

 

ただ、その人に相続が起きて相続人が相続財産を調査する際には、遺産分割協議書があったほうが財産状況を把握しやすいと思います。

 

なので、ご自分の相続のときに相続人の負担軽減を考えるのであれば、やはり遺産分割協議書は作成しておいた方がよいでしょう。

 

 

遺産分割協議書を作成しない場合のデメリットは?

 

遺産分割協議書を作成していないことの一番のデメリットは、相続人の誰かが勝手に財産を処分・使用する可能性があることです。遺産分割協議書には証明書としての要素もありますので、これがないと万が一の際に何も証明できないのです。

 

反対に、遺産分割協議書があれば、自分が正当な権利者であると証明できるわけです。つまり、遺産分割協議書がないことによって泣き寝入り状態に陥る可能性もあるのです。

 

それから、相続登記が面倒だからと不動産を共有状態にしておくと、後にトラブルに発展する可能性があります。なので、不動産を共有状態にしておくことは避けておいた方が無難です。

 

例えば、相続人が3人(A、B、C)、1/3ずつの持ち分で不動産を共有状態にしていたとします。その後、Aに相続が発生したとすると、Aの相続人であるD、E、Fがその不動産の相続権を取得することになります。

 

そして、D、E、Fも話し合いで共有状態にするということでまとまると、不動産の所有者はB、C、D、E、Fの5人になってしまいます。

 

こうした共有状態が繰り返されていくと、あっという間に所有者がどんどん増えていってしまう可能性があるのです。こうした状況になると、後々トラブルに発展することは避けられませんので、不動産は共有名義にしないことをおすすめします。

 

なお、相続税の申告・納税を税理士さんに頼む場合には、遺産分割協議書は必ず作成してくれますので、それほど心配する必要はありません。

 

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相続税の申告・納税は?

 

相続税の申告書の作成というのは、もちろん自分でもできます。ただ専門的な知識も必要になりますし、なかなか大変な作業になりますから、税理士に依頼するのが一般的です。

 

ちなみに、税理士以外の人が申告をすると、何らかの間違いがあるかもしれないと疑われ、税務調査の対象になりやすくなります。なので、やはり専門家に依頼することをおすすめします。

 

相続税の申告書は所轄の税務署に提出します。一方、納税は金融機関でできます。

 

 

相続税の申告・納税の注意点は?

 

相続税の申告・納税において最大の注意点は、相続税を減額してもらえる“控除や特例を使うことにより相続税が発生しないケース”になります。

 

相続でよく使われるのは“配偶者控除”と“小規模宅地の特例”です。

 

ただ、これらの制度は自動的に適用されるわけではありません。なぜなら、相続税の申告書に「○○の控除や特例を使うので相続税を納めません」と申告することによって初めて適用されるからです。

 

よくあるケースとして、「相続のことはよくわからないけれど、配偶者控除を使えば1億6,000万円までは相続税がかからないから手続きは何もしなくてもいいだろう」というものがあります。

 

実際、相続税の申告期限である10ヶ月を経過してしまうと後で税務署から指摘されます。

 

相続税の減額措置である控除や特例というのは、この10ヶ月以内に申告をしないと適用を受けることができなくなります。要するに、「相続税の申告を10ヶ月以内にするのならこれらの減額措置を使ってもいいよ」というものなのです。

 

ですから、10ヶ月を過ぎてから申告書を提出する場合には、控除や特例の適用を受けることはできません。

 

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つまり、10ヶ月以内に申告していれば相続税はゼロだったのに、期限後の申告になってしまったことにより、そもそも納める必要のなかった相続税と罰金を払う羽目になってしまうのです。

 

ということで、相続税に関しては、表面的な知識だけで判断するのはリスクが高いです。控除や特例を使って相続税がかからないケースにおいては、申告義務があることには注意してください。

 

なお、亡くなった人(被相続人)の全財産が相続税の基礎控除額に収まる場合には、、申告・納税義務共に発生しませんので混同しないように注意してください。

 

 

相続税の計算方法は?

 

相続税の計算と言っても、実際に相続が起きた場合は税理士の依頼される方がほとんどだと思います。

 

ただ、自分の相続が起きた時に、いくらくらいの相続税がかかるのかを計算してみたいですよね。そこで、相続税の計算方法の手順くらいは押さえておくことをおすすめします。

 

相続税の計算をするには、まずは正確に財産を特定する必要があります。預貯金などは目で見てわかる数字を入れればOKですが、不動産評価額の算出をするとなると困ってしまうはずです。

 

ちなみに、日本人の相続財産の大半が不動産だと言われています。ですから、この不動産評価ができないと相続税の算出は難しいと言えます。

 

とはいえ、不動産評価額を算出するのはそんなに難しくはないです。

 

 

不動産評価額の算出方法は?

 

不動産にかかる相続税を算出する際には、土地に対しては路線価、建物に対しては固定資産税評価額、これらを基準にして求めます。

 

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土地の値段には4つあるいは5つあると言われています(一物四価もしくは一物五価)。そして、路線価と固定資産税評価額もこの価格の中に含まれています。

 

路線価は、国が定める土地売買の目安である公示価格の8割程度で設定されています。一方、固定資産税評価額は公示価格の7割程度で設定されています。

 

つまり、家の購入代金をもとに考えるわけではないということです。なので、実際に家を購入代金をもとにして相続税を計算してしまうと、全く違う金額が算出されてしまいますから注意してください。

 

固定資産税評価額は、毎年4月ごろに市区町村役場から送られてくる“固定資産税の納税通知書”に記載されています。なので、不動産評価額はこの固定資産税の納税通知書をもとに求めることになります。

 

また、納税通知書では土地部分と建物部分は分けて示されていますので、双方の評価額を把握するようにします。

 

ただし、前述のとおり、相続では土地の評価額算出には“路線価”を使います。

 

路線価は公示価格の8割、固定資産税評価額は公示価格の7割です。なので、より正確に土地評価額を算出したい場合には、納税通知書に記載されている土地部分の固定資産税評価額の1割増しの金額で考えるようにしてみてください。

 

さらに、土地の評価額を算出する際には、その土地が角地であるか、2つの土地に面しているか、奥行きがどれくらいあるか、など色々な要素が考慮されます。

 

よって、仮に同じ面積の土地であっても評価額は異なってきます。当然、使い勝手の良い土地は人気がありますから評価額は高くなります。

 

なお、このような補正率を使った計算については後述しますが、同じ面積の土地であっても評価額が前後するということは押さえておいてください。

 

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相続税の計算方法は?

 

それでは続いて、相続税の計算方法のお話です。相続税の算出するには、3つの手順を踏むことになります。

 

まず1つ目の手順として、全相続財産の総額(みなし相続財産を含む)から債務(借金など)を差し引きます。

 

代表的な相続財産としては、預貯金や不動産、有価証券、車、ゴルフ会員権、骨董品などがあります。また、相続人を受取人とする生命保険金などのみなし相続財産がある場合には、それも算入します。

 

さらに、相続時精算課税制度や相続開始3年以内の贈与によって相続人が取得した財産も相続財産とみなされますので、それらの財産があれば算入します。

 

そして、次に債務の確認です。

 

代表的な債務としては、亡くなった人が残した借金や未払いの医療費などがあります。

 

ちなみに、葬儀費用も債務に算入することが可能です。葬儀費用の平均は、葬儀費用やお寺に支払う費用、飲食費用などすべて含めて約200万円と言われています。

 

なので、相続税のシミュレーションをする際にはこの金額をもとにして検討してみてください。

 

債務の合計金額は負の財産とみなされ、前述の全相続財産の総額(正の財産)から差し引くことができます(債務控除)。

 

 

2つ目の手順は・・・

 

2つ目の手順として、先ほど算出した金額から相続税の基礎控除額やみなし相続財産の非課税枠を差し引きます。

 

全相続財産の総額から債務の合計を差し引いたものから、さらに相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引きます。

 

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そして、死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産がある場合には、さらにみなし相続財産の非課税枠(500万円×法定相続人の数)も差し引くことが可能です。

 

死亡保険金と死亡退職金の両方が発生する場合には、それぞれに非課税枠が設けられています。なので、(500万円×法定相続人の数)×2が非課税枠として認められます。

 

 

3つ目の手順は・・・

 

3つ目の手順として、先ほど算出した金額を相続税の速算表に当てはめて相続税を算出します。

 

この計算により算出できるのは、あくまでも相続税の総額です。つまり、相続人一人当たりの税額ではないということです。

 

例えば、相続人が配偶者と子供2人で、この計算により算出された相続税の総額が200万円だったとします。

 

法定相続分に応じて遺産分割協議を終えたとすると、配偶者は、200万円×1/2=100万円の相続税額となります。一方、子供一人当たりは、200万円×1/4=50万円の相続税額となります。

 

以上が相続税の計算手順になりますが、ここでは相続税の減額措置である控除や特例を用いずにシミュレーションしています。

 

もし控除や特例の概要をある程度つかめているのであれば、それを適用したと仮定して計算すると、より正確な相続税額を算出することができます。

 

なお、相続における代表的な減額措置として、配偶者控除と小規模宅地の特例があります。

 

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