養子と代襲相続の相続権がある場合の法定相続分の計算は?

 

 

養子代襲相続相続権がある場合の

法定相続分計算は?

 

 

今回は、相続権が重複する場合の法定相続分の計算方法についてのお話です。相続権の重複する場合というのはどういったケースかというと・・・

 

例えば、被相続人の孫に代襲相続が発生し、かつ、その孫と養子縁組をしたようなケースがこれに該当します。

 

本来なら被相続人の相続の時には、被相続人の子供に相続権が発生します。ですが、その子供が相続欠格や相続廃除、あるいは被相続人よりも先に亡くなっていたような場合には、その子供の子供、つまり被相続人の孫に代襲相続が発生します。

 

要するに、被相続人の子供が何らかの理由により不在の場合には、孫に相続権が移行するということです。

 

さらに、被相続人が孫と養子縁組をしていれば、相続発生時には実子と同じ立場、すなわち第一順位の相続人としての立場になります。

 

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養子と代襲相続の相続権の計算は?

 

代襲相続者としての相続権と養子としての相続権の両方が発生した場合には、法定相続分の計算はどのようにするのでしょうか?

 

これについては、両方の相続権を合算したものが法定相続分として認められます。

 

例えば、被相続人Aの相続人は実子B、Cと、Dだったとします。また、被相続人Aは、実子Bの子供E、F(Aの孫)のうちEと養子縁組をしたとします。

 

この場合、被相続人Aに相続が発生すると、相続人は実子B、C、Dと孫養子Eとなります。なので、法定相続分は1/4ずつ(1人あたり)となります。

 

一方、例えば実子Bが不慮の事故でなくなった後に被相続人Aが亡くなった場合にはどうなるのでしょうか?

 

この場合、本来、相続人としての権利を持つはずだったBの相続権が宙に浮いてしまうことになります。このような事態を回避するために、代襲相続により宙に浮いたBの相続権がBの子供E、Fに移行するわけです。

 

Bの法定相続分は1/4ですから、その1/4をEとFで分けると1/8(1/4×1/2)となります。つまり、EとFの一人あたりの法定相続分は1/8となるわけです。

 

他方、Fは全相続財産のうち1/8を相続できますが、Eには養子としての相続権も発生します。要するに、Eは第一順位としての相続権1/4と代襲相続者としての相続権1/8の合計3/8を相続することができるということです。

 

よって、相続人それぞれの法定相続分は、実子CとDは1/4(2/8)ずつ、孫養子Eは3/8(実子Bの代襲相続分1/8+養子としての相続分1/4)、孫Fは1/8(実子Bの代襲相続分)となります。

 

 

相続権が重複しないケースは?

 

先ほどの説明から、法定相続人となる可能性のある、かつ、被相続人と養子縁組をすると、相続権が重複する可能性が高まると思われるかもしれません。ただケースによっては、相続権の重複が発生しないケースもあります。

 

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具体的に2つのケースで考えてみます。

 

1つ目のケースは、例えば、被相続人Aが子供Bの配偶者Eと養子縁組をした場合です。

 

この場合は、被相続人Aに相続が起きると、相続人は被相続人の実子B、C、Dと養子E(Bの配偶者)の4人です。なので、法定相続分は1/4ずつということになります。

 

一方、その後、Bの相続が起きた場合はどうなるのでしょうか?

 

BとEとの間には子供がいなかったとすると、Bの相続人は配偶者Eと兄弟姉妹C、Dとなります。ただ配偶者EはBの親であるAと養子縁組をしています。

 

そうすると、配偶者EはAの子供であるとみなされますから、戸籍上はB、C、D、Eが兄弟姉妹であると解釈されることになります。

 

これによると、Bの相続時には、配偶者Eの法定相続分は、配偶者Eとしての相続権と兄弟姉妹としての相続権の両方である、と考えることができそうです。

 

しかしながら、これについては解釈が分かれているのが現状です。学説では、相続権の重複を認めるという説が有力です。一方、先例では、配偶者としての相続分のみが認めらるということになっています。

 

なお、学説と先例とでどちらが正しいのかという争いはあるものの、実務上は先例に基づき手続きが進められています。

 

 

2つ目のケースは・・・

 

被相続人が第三順位の相続人(兄弟姉妹あるいは甥・姪)と養子縁組をしたケースです。

 

被相続人が第三順位の相続人である兄弟姉妹や甥・姪と養子縁組をすると、その相続人は第一順位の相続人になることができます。すると、被相続人の相続時には、養子としての相続権と第三順位の相続権の両方が発生するように思えます。

 

ですが、異順位の相続権の重複はできないことになっています。この場合は先順位の相続権(養子としての相続権)だけが認められることになります。

 

よって、被相続人に配偶者がいる場合は、養子の法定相続分は1/2となります。一方、配偶者がいない場合は、養子が全財産を相続することになります。

 

ということで、順位の違う相続権の重複は認められていませんので注意してください。

 

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3つ目のケースは・・・

 

嫡出子と非嫡出子の相続権の重複です。

 

例えば、被相続人Aには、配偶者Bとの子供Cと、Aからの認知がある被嫡出子Dがいて、DがAと養子縁組をしているようなケースです。

 

ちなみに、非嫡出子というのは、婚姻関係のない男女の間に生まれた子供のことです。かつては、認知のある非嫡出子は嫡出子の相続分の1/2とされていましたが、現在では法改正が行われて、嫡出子と同等の相続分が認められるようになっています。

 

そうなると、認知のある非嫡出子としての相続権と、養子としての相続権の両方の相続権が認められるとも考えられます。

 

ただ、被嫡出子と養子縁組を行うのは、あくまでも非嫡出子を嫡出子にするためですから、非嫡出子と嫡出子の2つの権利が発生するというわけではありません。

 

この場合は、あくまでも養子としての権利だけが認められるということになります。

 

 

相続権が重複する場合の注意点は?

 

相続権が重複する場合に一番の注意点は、相続税の基礎控除額やみなし相続財産の非課税枠を使う際の相続人のカウントになります。

 

仮に相続権が重複する相続人がいても、二重にカウントされるわけではありません。あくまでも相続人のカウントは実数で行われます。相続権が重複する場合、控除額や非課税枠も増えるように考えがちですが、そのようなことはありませんので注意してください。

 

相続権が重複しているのにそれに気づかず、片方だけのカウントになったまま手続きを進めてしまうと、後々トラブルに発展しかねません。

 

一度、相続税の申告・納税など手続きを完了させた後に、再度遺産分割協議などの手続きをやり直すとなると、大変な時間と労力がかかります。専門家に依頼する費用もかさんでくるでしょう。

 

被相続人と養子縁組をしている場合には、相続権が重複する可能性が高いです。一つ一つの手続きや確認を正確に行い、スムーズに相続を完了できるようにしたいものですね。

 

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