相続放棄の注意点!
預貯金や日用品の処分は?
今回のお話は相続放棄についてのお話です。まず相続財産というのは、プラスの財産もあればマイナスの財産もあるということを理解しなくてはいけません。
相続というと、とかく財産が転がり込んでくるというイメージがありがちですが、考えてみればそれはもう一昔前の話といってもよいかもしれません。というのは、日本はバブル経済の崩壊からずっと右肩下がりの経済になっているからです。
そうすると、バブル崩壊から20年くらい経っていますが、この20年の中での各家庭の資産バランスというのも当然狂いが生じていることになるわけです。
そうなると、要は資産がたくさんあって負債はゼロというような背景から、ややもするとそれが逆転し始めているということも、今も起こっているかもしれませんし、これからもっと起こってくる可能性が出てくると思われます。
そうすると、相続財産というのは、被相続人(亡くなった人)の財産を相続するということは、プラスの財産もマイナスの財産もすべて含めて財産ですよということを意味することになります。
プラスが100でマイナスが0であれば、みんな喜んで相続すると思いますが、これが逆だったらどうでしょうか?
極端なことを言えば、プラスの財産が0でマイナスの財産が100あったとしたら、それは相続人が背負わなければいけないのかということになりますとやってられませんよね。
いくら親子の関係だとしても、あるいは配偶者の関係だとしても、ある意味他人が作った負の資産をなぜ自分が背負わなければならないのだと、これはちょっとやりきれないことになります。
そこで法律は、相続したくなければ「いらないよ」と言えることを認めています。これを法律上は「相続放棄」といいます。
つまり、「私には相続権があるのだけれど、この際この相続自体私は要りません」「もう関わりたくありません」「お荷物を背負いたくありません」と主張することができるという権利を認めているのです。
これはぜひ知っておくとよい制度です。要は、ふたを開けたらもう借金だらけ、その借金を背負うだけの余力が自分にはない、それならもう相続自体私はしません、あるいは相続人全体でもう要りません、というような主張ができるというのがこの相続放棄になります。
相続放棄の注意点とは?
ただし、注意していただきたいことがあります。相続放棄に関しては、法律で相続の放棄を主張できる期限というものを決めています。
ですから、この期限のことを知らなかったり忘れていたりしますと、それを経過してからはそもそも放棄すること自体できなくなってくるということがありますので注意が必要です。
この相続放棄は相続が開始されてから、3ヶ月と決まっています。一般的に被相続人が亡くなったときを通常相続の開始時期といいますが、お爺さんお婆さんが亡くなった時点が相続の開始の時期になりますから、相続放棄はこの時期から3ヶ月と決まっています。
つまり、相続放棄は相続が開始されてから3ヶ月以内でないと放棄するという宣言ができないと決まっているのです。
ですから、例えば極端なことを言いますと、借金ばかりの財産など要りません、あるいは相続人全員で要りません、ということなのであればこの相続の放棄を主張できます。
もしくは「揉めそうだから私はもうこの相続には関わりたくないので、相続権があるのだろうけれど私は要りません、結構です」という放棄もできます。
いわゆる俗に言う骨肉の争いのような相続に巻き込まれるくらいなら、その財産を私は要りませんのでという放棄もできます。要は関わりたくないということですね。
そういったものも含めて相続放棄といいますが、相続放棄は相続が開始されてから3ヶ月以内にその宣誓をしなければいけないというのが決まりになります。
この期限を超えてしまうともう放棄はできなくなりますから、そうしますとその後どうするのかというと、また遺産分割協議等で決めていかなくてはならなくなります。
ですから、その手前で決着が付けられるのであれば、そういった手続きもできるというのがこの相続の世界なのですね。
被相続人の預貯金を葬式代に使用してしまっても相続放棄は可能?
基本的には問題ありません。というのは、預貯金を引き出して葬儀費用などに当てた場合、判例上も問題がないとされているからです。では、豪華な葬儀の場合でも財産の処分行為とみなされないのでしょうか?
確かにそういったケースもありますよね。分相応なものであれば問題ありませんので、必要以上に豪華な葬儀は避けた方が無難です。
被相続人の日用品を処分してしまった場合は?
では、被相続人の使用していた日用品を処分してしまった場合、相続放棄はできるのでしょうか?
基本的に日用品を処分しても相続放棄には問題ありません。一方で日用品の中でも資産価値のあるものもありますよね。この場合も、現金に換えられないものは無価値と判断して大丈夫です。
ただ色々なものがあってわからない場合もあると思われますので、そういった場合には一度専門家に相談されることをおすすめします。