なぜ特別受益の持戻しで争いになるの?

 

 

なぜ特別受益の持戻し争いになるの?

 

 

今回は特別受益の持戻しという制度について、なぜここが遺産分割の際に非常に争いが多くなるのかというお話です。

 

なぜ今回これについて説明するのかというと、特別受益の持戻しという制度を知っていても、遺産分割というのは相手があってのことだからです。遺産分割をまとめるためには、他の法定相続人全員の印鑑をもらわなければなりません。

 

そうすると、そういった争いごとをする場合において、「どこでもめるのだろう」ということを知っておかないと、相手を説得するというポイントを外してしまうかもしれません。

 

また、そもそも遺産分割をする前に「あー、こういうところでもめるんだ」ともめそうなところがわかっていれば、そこに注意をしながら遺産分割の話を進めるということもできます。それでは、なぜここがそれほど問題になるのかという話を事例を使って説明していきます。

 

スポンサーリンク

 

 

なぜ特別受益の持戻しが問題になるの?

 

例えば、特別受益の持戻しとして持ち出されるものの中に、法律の条文にも書いてある「婚姻の費用としての贈与」というものがあります。

 

この特別受益の持戻しについては、もらった人が特別受益を受けた人、生前贈与を受けた人が法定相続人である場合には、期間制限がありません。

 

例えば、親が80歳で亡くなり、相続人の子供が60歳です。40年前、20歳の頃の結婚の費用について「特別受益だ」と主張することができるのです。

 

 

では、そうなるとどうなるのかという話なのですが・・・

 

どこまでもさかのぼれるのなら、婚姻であるとか学費であるとか、お兄さんだけ大学に行かせてもらったとか、お兄さんだけ私立だったとか、そういった話を持ちだしても構わないわけです。

 

ただ、こうした話を持ち出すとどういうことになるのかというと、非常に昔の話なので証拠がない、あるいは非常に部分的にしか証拠が残っていない、そういったことが多いです。

 

また、特別受益が問題になるのは親子間の話ですから、親子間で何かしら親が子に援助をするというときに、銀行振込で援助をする、あるいは領収書をとっておく、契約書を交わす、というようなことはしませんよね。

 

一方、会社と会社との取引など取引関係であれば、相手との間に親子ほどの強い信頼関係がありませんから、相手ともめても大丈夫なように証拠を残そうという話になります。

 

でも他人ではなく家族ですから、基本的に信頼している人間同士のお金のやり取りなので、そもそも証拠を作りませんよね。

 

ですから、古い話ということと、証拠を作らないということが原因となって、証拠がほとんどありません、部分的にしかありません、ということになってきます。

 

スポンサーリンク

 

 

そうすると、どういうことになってくるのかというと・・・

 

そもそも親Xさんが亡くなって、子供たちABCが争っているときに、何十年か前に、例えばBさんが援助を受けたのか受けていないのか、贈与を受けたのか受けていないのか、ということについて証拠がありません。

 

例えばBさんが自分の取り分を減らしたくないからといって「知らない」と言ったり、本当に忘れていたということになると、それを主張したいAさんとしては、「証拠がないから困ったな、でも絶対にもらっているはずだ、おかしい」となって、非常に感情的な対立が激しくなるということになるのです。

 

 

なぜ争いになるの?

 

どうして争いになるのかという話ですが、先ほどどこまでさかのぼってもいいという話をしました。

 

また、婚姻であるとか養子縁組のための生前贈与というのは何のことかわかるのですが、生計の資本の贈与も特別受益に含まれるということになると、「これは何ですか?」という話になってきます。

 

例えば毎月、生活費の足しにお金をもらっていたというのは、当然これに該当するのでしょうけれど、先ほどの学費を援助してもらったというのは生計の資本なのかどうか、これを言い出すと切りがないわけです。

 

金銭であれば特別受益であるというような明確なルールもありませんので、財産の種類による明確なルールもないということになります。では使い道はどうかというと、「生計の資本」という何だかよくわからない曖昧な基準しかありません。

 

 

そうすると、どういう話になるのかというと・・・

 

Aさん、Bさん、Cさんの三兄弟で遺産分割で争っているときに、AさんがBさんに「あなたはこれだけもらったよね」と過去の話をすると、Bさんは「そんなことを言うんだったらAさんだってこれをもらっただろ」と言い出します。

 

スポンサーリンク

 

 

すると、それを言われたAさんも「オレも今まで黙っていたけど、そんなことを言うんだったらこれだけじゃなくて、これを遺産分割で計算しなければいけないだろ」と言って、とにかくこれでもかこれでもかと切りがないくらい続くのです。

 

そうして遺産分割が非常に長引いていく、もめるということになります。

 

なので、特別受益の持戻しという制度は、例えば自分の取得する遺産額を増やそうと思ったら、他の兄弟などの特別受益の持戻しを主張するというのは非常に有効なのですが、言うと色々と言い返されるリスクがあります。

 

こうしたことを理解して、この特別受益の持戻しというのを遺産分割のときに言うか言わないかということです。

 

たいていは誰かが言い始めると、言われた方も「じゃ、自分も」とあれこれ考えて言います。そういうときにまたもめるのが、AさんがそれならどうしてBさんが生前贈与を親から受けたのかというその根拠が、誰かからの又聞きだったりするケースです。

 

例えば親戚の人から「Aさん、あなた知らなくてかわいそうだから教えてあげるけど、実はBさんはこっそり親から毎月お金をもらっていたんだよ」というように聞いても、それが本当かどうかはわかりません。

 

また、Aさんにそういった情報を教えた親戚の人も、よくわからないで人からの噂で言っていたり、「きっとこの人最近羽振りがいいから、親から援助してもらっているに違いない」というように推測で物を言うことになると、もしそれが違うということになるとやはりBさんも怒りますよね。

 

それなら徹底的に闘うぞという形になるわけです。

 

 

特別受益の持戻しは慎重に?

 

もちろん、すでに例えば兄弟間の信頼関係が失われていて、もうこの際法律上自分が取れるものはしっかり取ってくれという話であれば、特別受益の持戻しというのを主張するのは有効だと思います。

 

スポンサーリンク

 

 

ただ、まだ兄弟間の信頼関係があまり失われていないという場合に、やたらめったらこの特別受益の持戻しの話をしてしまうと、遺産の取り分は若干増えるかもしれませんが、兄弟間で言い合いになって信頼関係が失われてしまう恐れもあります。

 

ですから、特別受益の持戻しという制度を使うときには十分注意が必要です。

 

 

特別受益の持戻しの立証方法は?

 

特別受益の持戻しというのは、自分が言うと相手に言い返される、また古い話なので相手も覚えていないかもしれないし、知らないと言われるかもしれません。

 

では、そういうときに備えてどうするのかというと・・・

 

「どうやって立証するのか」というのも考えたうえで特別受益の持戻しというのを主張するか主張しないかということを検討していただきたいです。

 

そしてどうやって立証するのかというと・・・

 

相手が知らないと言った場合には、こちらで出さないといけません。例えばお金の動き、そもそも親から自分の兄弟にお金が動いているのだろうか、これは不動産でも同じです。財産が動いているのかどうかです。

 

例えば親の預金口座からお金が動いていたとしても、それをもらったのだろうか、という話も出てきます。

 

そういうことになると、特別受益の持戻しというのは非常に古い話まで出せますから、一度言い始めると必ず相手から言い返されるということで、非常に争いが激化してしまいます。

 

ですから、使い時には慎重に使うようにして下さい。

 

ということで、どうやって立証するのかというのは、相手が知らないと言っても「ほら、ここにあるじゃないか」というように、きちんと根拠を確認してから主張すべきではないかと思います。

 

特別受益の持戻しを使う際に、これを出すと非常に争いになりやすいですから、十分に注意するようにして下さい。

 

スポンサーリンク

 

関連記事(一部広告含む)