遺産分割のトラブル事例|不動産共有と取得費加算の特例など...

 

 

遺産分割トラブル事例

不動産共有と取得費加算の特例など...

 

 

今回は相続対策におけるトラブル敗事例についてのお話です。まずは遺産分割のトラブルからご紹介します。

 

具体的には先々を考えた遺産分割ができていない、例えば、相続対策や遺産分割において安易に不動産を共有し、後々面倒なことになってしまった事例です。その説明に共有地の解消と将来不安を同時に解決した成功事例の一部をお話します。

 

まず相談者は長女夫婦です。関係者は父、母、兄、叔父さん、叔母さんで、この方の実家の土地が、長女の夫を除くこの6人の共有となっていました。

 

なぜこのような共有になったのか詳しくは説明しませんが、簡単に言うと、安易な遺産分割が原因でした。この状態がまさしく遺産分割のトラブル事例といえるのです。

 

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相談者である長女の希望は、夫名義の現在の住まいを売却して長女夫婦と父の2世帯住宅を建てたいということでした。また、長男は独身で父親の面倒が見られないので、長女夫婦が2世帯住宅に住むことになっていたそうです。

 

なので、長女夫婦は叔父さん、叔母さんから土地の持ち分を購入し土地の共有を解消したいと思っていましたが、どうやって誰がどのようにして建てればよいかわからず、知人を通じて私のところに来られたのです。

 

このケースでは、「共有物の分割」という方法を使うことによって、最終的には次のような所有関係となりました。

 

まず共有物分割を複数回行って、叔父さん叔母さんの土地の持ち分を長女夫婦が買い取りました。また、最終的に長男のものになる土地と長女夫婦の所有になる土地の2つに分筆し、それぞれ長男と両親、長女夫婦と両親の共有にしました。

 

つまり、いずれ相続で長男および長女夫婦がそれぞれの所有になる所有形態にしたのです。そして、将来、長男のものになる土地の上には父名義で賃貸住宅を建てて、長男はそこに住むこととなりました。

 

さらに、将来長女のものになる土地の上には長女の夫名義で2世帯住宅を建てて、父からは家賃をもらうことにしたのです。

 

かなり省略しましたが、このように共有関係の解消相談は時々あります。その多くは安易に共有で遺産分割をしてしまったり、安易に持分を贈与してしまったことが原因です。

 

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遺産分割の際の共有の原則については、直系(親と子、祖父と孫など)の共有は何も問題ないので構いません。というのは、いずれ親や祖父がなくなり子や孫のものになるからです。

 

ですが、横(兄弟や姉妹など)の共有は絶対ダメです。なぜなら、仮にその時は兄弟の仲が良かったとしても、相続で次の代に相続されると次の代も円満な関係という保証はないからです。また共有者がどんどん増えてしまう可能性もあるからです。

 

なので、兄弟や姉妹などでの共有は絶対しないように注意してください。

 

 

取得費加算の特例が使えなくなってしまったトラブル事例とは?

 

続いて、後で売却する前提で自宅を共有で相続した後、売却時期でもめて4年経過し、不動産が値下がりしてしまい、取得費加算も使えなくなってしまったトラブル事例です。

 

このケースの内容は、遺産分割の都合上、後で売却する前提で、とりあえず自宅を兄弟2人の共有で相続したのだけれど、その後、売却時期でもめてしまい売却ができず、4年経過してしまいました。

 

すると、不動産(自宅の価格が)値下がりしてしまった上に、さらに相続により取得した財産を売却した場合に譲渡税を軽減できる特例である「取得費加算」が使えなくなってしまったというものです。

 

 

一次相続で母に財産を相続させすぎたトラブル事例とは?

 

続いて、一次相続で安易に母に財産を相続させすぎて、結果的に相続税が多くなってしまったというトラブル事例です。まずは一番わかりやすい事例で解説します。

 

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相続税の制度の中には、配偶者だけに認められる「配偶者の税額の軽減」というものがあります。

 

この制度は、配偶者が今後生活していく上で必要となる生活資金や、夫婦が協力して財産を築き上げてきたことなどを考慮して、残された配偶者の税負担を減らしてくれるものです。

 

この配偶者の税額の軽減の特例を利用すると、1億6,000万円または配偶者の法定相続分(遺産の1/2)の財産額のうち、どちらか高い方までが非課税となります。

 

例えば、相続財産の基礎控除前の課税価格が1億6,000万円、家族構成は、父・母・子供2人の場合の相続の仕方による相続税額を比較してみます。

 

まず一次相続で母親が全ての財産を相続した場合と法定相続割合通りに相続をした場合の一次、二次相続税額を比較します。

 

二次相続時には単純に母親が相続した財産全てがそのまま残っている場合の試算です。実際にはそのまま残ることはないと思いますが、あくまでも考え方の説明としてです。

 

母親が全ての財産を相続した場合は、一次相続税はゼロになりますが、そのままの財産額で二次相続を迎えた場合には、二次相続税額は2,140万円となります。

 

しかしながら、法定相続割合どおりに相続をした場合は、一次相続税額が860万円、二次相続税額が470万円となり合計では1,330万円となります。つまり、法定相続割合どおりに相続した方がトータルの相続税額は少なくなるということです。

 

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これは、もう少し大きな財産の額、例えば10億円の場合でみると、より影響が顕著になります。一次相続時母が取得する割合10%刻みごとの一次相続税額と二次相続税額および合計額のグラフがあるのですがそれを見ますと…

 

母が50%以上を取得しても一次相続時の相続税額は変わりませんが、母が50%を超えて財産を相続すればするほど、母の財産が増えますので二次相続時の相続税が増えていくことがわかります。

 

逆に、母が20〜30%程度のときの一次、二次相続税額の合計額は、母が50%のときの相続税額の合計額よりも1,200万円程度少なくなります。

 

これは、配偶者に固有の相続で引き継ぐ財産以外のもともと持っている財産がある場合にはもっと顕著に影響してきます。

 

ということで、一次相続時の母と子の相続割合の一次相続時の母と子の相続割合の最適配分は「配偶者が50%取得すること」が最適配分とは限らないのです。つまり、一次、二次相続税合計の比較がポイントになるのです。

 

今後は相続税が増税される方向にありますから、母に多くの財産を相続させると将来の相続税の負担が増えますので注意が必要です。

 

 

長男に収益不動産を集め過ぎてしまったトラブル事例とは?

 

続いて、一次相続で長男に収益不動産を集め過ぎてしまい、長男と不仲の母が収入不足となって生活が困窮してしまったというトラブル事例です。

 

地主さんなど資産家の遺産分割の場合、収益の生む不動産は子供に多く相続させることがよくあります。これは、母に収益を集中させすぎると、母親の相続財産が増加し、相続税も増えてしまうからです。

 

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かといって、このケースのように、一次相続で長男に収益不動産を集め過ぎると、相続の後、長男と母親が不仲になってしまい、母親が収入不足となり生活に困窮してしまうということも起こりかねません。

 

 

納税猶予制度を理解していなかったトラブル事例とは?

 

続いて、一次相続で生産緑地の納税猶予を長男で受けてしまい、長男は終身営農義務で将来不安になっているという事例です。これは農家特有の事例です。

 

生産緑地の納税猶予を受けてしまうと終身営農の義務を課せられます。

 

もし途中で農業をやめてしまうと、猶予されていた相続税とそれまでの利子税も納めなくてはなりません。これは大変な負担となってしまいます。

 

相続人である子が納税猶予を受ける場合、その子供(孫など)が農業を継ぐことができない、万が一、農地を相続した長男が病気などで農業ができなくなってしまうと、納税猶予を受けられなくなってしまいます。

 

納税猶予制度のことを十分理解せず、目先の相続税が大幅に少なくなるからといって、後継者もいない状況で納税猶予を受けてしまって、将来不安に陥ってしまったというトラブル事例になります。

 

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