生前贈与を行う際の注意点|定期贈与と連年贈与の違いは?

 

 

生前贈与を行う際の注意点

定期贈与連年贈与違いは?

 

 

今回は、生前贈与を行う際の注意点などについてのお話です。

 

相続対策や相続税対策において、まず一番最初にやらなければならないことは、あなた自身の財産状況の把握です。

 

というのは、財産状況をきちんと把握したうえでそれらの対策しないと、良かれと思って行った対策が、却ってその後の相続トラブルに発展することにもなりかねないからです。

 

なので、あなた自身の財産状況をきちんと把握し、色々な試算をしたうえで対策を取るようにしてください。こうした流れを守るようにすることが、円満な相続を迎えるポイントになります。

 

さて、生前に贈与を行うことは、立派な相続対策・相続税対策です。

 

ただどちらかといえば、生前贈与は相続税対策に直結する部分が多いです。相続人予定者にあなた自身の財産の一部を生前贈与しておけば、財産の前渡しができます。

 

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また生前に相続財産を減らしておくことによって相続税の課税対象額を減らすこともできます。その結果、相続時に納税する相続税を少なくすることが可能となります。

 

とはいえ、贈与税というのは日本の税金の中では最も税率が高いです。ですから、それによって何となく取っつきにくいイメージを持たれている方も少なくありません。

 

ちなみに、高齢者の平均預金額が約2,000万円とかなり高額であることから、高齢者にお金を使ってもらうために、様々な贈与の優遇措置制度が新設されています。

 

ただそれでもなかなか浸透していないのが現状です。

 

 

贈与と暦年課税制度とは?

 

一口に贈与といっても、住宅取得資金の贈与や教育資金の贈与、結婚資金の贈与、相続時精算課税制度など、色々な種類の贈与があります。

 

まず暦年課税制度というのは、年間110万円までの贈与であれば非課税という制度です。贈与税が日本の税金の中で最も税率が高いのは前述のとおりです。

 

この贈与税率には2種類あります。

 

ちなみに、平成27年の相続税法改正の際に贈与税法についても改正されています。つまり、相続税の基礎控除額の引き下げと同じ時期に、贈与税率が2つに分かれたのです。

 

具体的には、贈与税率は一般税率と特例税率の2つに分けられました。そして、一般税率よりも特例税率のほうが税率は低く設定されています。

 

特例税率の適用要件は、直系尊属(父母・祖父母)から贈与年の1月1日において20歳以上の直系卑属(子・孫)に向けた贈与であることです。これはまさに、国が家族間での贈与を推進するためのものであることが読み取れますよね。

 

とはいえ、どのような金額でも特例税率のほうが税率が低いというわけではないので注意が必要です。具体的には、401万1円以上の贈与でなければ特例税率のほうが税率が低くなりません。

 

というわけで、これについては、少額で贈与をしたいという人にはほとんど意味のないこととなってしまうかもしれません。

 

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贈与の2つの解釈とは?

 

続いて、贈与には2つの解釈があるというお話です。

 

まず贈与税率には2種類あるというのは前述のとおりですが、実は贈与自体も2種類に分けることができます。これについてはほとんど知られていませんので、ぜひこの機会に押さえておいてください。

 

 

定期贈与と連年贈与の違いは?

 

贈与は「定期贈与」と「連年贈与」に分けることができます。それでは事例を用いて詳しく解説していきます。

 

定期贈与というのは、例えば「1,000万円を贈与するために100万円を10年間続けて贈与する」というような贈与の仕方のことを言います。

 

一方、連年贈与というのは、「100万円の贈与を10年間続けたら、結果として1,000万円の贈与になっていた」というような贈与の仕方のことを言います。

 

決定的な違いはどこかお分かりになるでしょうか?

 

前述の定期贈与と連年贈与についてもう少し詳しくみていきます。まずどちらも「100万円の贈与を10年間続けた」といった贈与の過程は同じです。

 

ですが、「1,000万円を贈与するために100万円の贈与を10年間続けた」といった意味合いになると、これは定期贈与とみなされることになります。

 

一方、「100万円の贈与を10年間続けたら、結果として1,000万円の贈与になったといった意味合いになると、これは連年贈与とみなされることになります。

 

連年贈与の注意点としては、「100万円の贈与を10年間続けたら、結果的に1,000万円の贈与をしたことになっていた」という解釈ですと定期贈与とみなされませんが、「今年から100万円の贈与を10年間続けることになった」という解釈ですと定期贈与とみなされることです。

 

ちなみに、贈与の解釈については2種類あるということはわかったとはいえ、どちらも似ているし、結局これを知ったところでどうなるのかと思われるかもしれません。

 

ところが、実はこの点が後々非常に重要なポイントになってきます。

 

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定期贈与と連年贈与のその後の影響とは?

 

では、定期贈与と連年贈与、その後にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

 

結論から申し上げますと、いずれかに贈与税が発生することになります。定期贈与も連年贈与もどちらも年間110万円非課税枠を超えていないのに、なぜ贈与税が発生するのでしょうか?

 

何となくイメージできるかもしれませんが、贈与税の納税義務が発生するのは“定期贈与”のほうです。

 

これは、「本当はまとまったお金を贈与したいのだけれど、贈与税を支払いたくないから、非課税枠内の贈与を何年にもわたり繰り返してきたのではないか?」とみなされてしまうからです。

 

つまり、定期贈与の場合、「本当は最初からまとまったお金を贈与したかったのですよね」と解釈されてしまうのです。

 

例えば、1,000万円を贈与するために100万円を10年間続けて贈与した場合、贈与税の課税対象額は、1,000万円から年間110万円の非課税枠を差し引いた890万円です。つまり、1,000万円−110万円=890万円に対して贈与税が発生します。

 

ちなみに、この場合の贈与税の納税額は、特例税率を適用したとすると177万円になります。なお、前述のとおり、連年贈与では贈与税は一切かかりません。

 

 

定期贈与とみなされないための対策は?

 

「この贈与は定期贈与ですよね」と指摘をするのは税務署です。では、どのような対策を取れば定期贈与とみなされないのでしょうか?

 

税務署から定期贈与と指摘されないためにできることは、贈与をするたびに毎回“贈与契約書を作成する”ことです。

 

ただし、単に贈与契約書を作成すればいいわけではありません。というのは、この贈与契約書を作成するうえではいくつかの注意点があるからです。

 

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贈与契約書作成の注意点とは?

 

まず贈与契約書については、インターネットを検索するとひな型が出てきますので、一からご自身で作成されなくても大丈夫です。

 

ただし、“いつ”“誰に”“何を”“どのような条件で”“どのような目的で”“どのように贈与するのか”といった6項目については必ず明記するようにしてください。

 

また作成した契約書はパソコンで印刷したものでOKですが、“署名”と“日付”は手書きで記入するようにしてください。押印については、実印を使用することをおすすめします。これは、信頼性のある契約書とみなされるからです。

 

見落としがちなのは、贈与契約書を作成しても贈与者・受贈者の一方しか保管していないという点です。贈与契約書を作成しても、贈与者と受贈者の双方が契約書を持っていないと一方的な贈与とされてしまいます。

 

つまり、“名ばかり贈与”とみなされてしまいます。なので、贈与契約書は2通作成して、贈与する側と贈与を受ける側の双方がきちんと保管しておくようにしてください。

 

 

贈与財産が現金の場合は・・・

 

贈与財産が現金の場合は、手渡しではなく必ず“振り込み”で行うようにしましょう。これは、贈与をしたという証拠をしっかり残しておくことが重要だからです。

 

仮に年間110万円をわずかにでも超える贈与をすれば、贈与税の申告をする必要があります。なので、納税義務が発生する場合にはきちんと納税するようにしてください。

 

ちなみに、あえて110万円の非課税枠を少しだけ超える贈与をして、数千円の贈与税を納めることによって、税務署に対して贈与をしたという証拠を残す贈与の方法もあります。

 

例えば、1万円に対して発生する贈与税1,000円を納税するというような方法です。そもそも疑われることさえされたくないという人には、おすすめの方法かもしれません。

 

 

定期贈与とみなされないためには?

 

大きな金額を分散させて贈与するために、毎年贈与を行うことにすると明記しないことです。例えば、「合計1,000万円を贈与するために、100万円ずつ10年間贈与する」というようなニュアンスにとられかねない表現を記載しないことです。

 

こうした表現が贈与契約書に明記しないのは当然ですが、契約書や通帳へのメモ書き、日記に書かれているのが税務署に発見されると、一発で定期贈与とみなされてしまいますので注意してください。

 

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