相続の割合の計算
特別受益と遺留分割合は?
今回は相続分、つまり取り分(割合)についてのお話です。遺言書がなければ、あるいは遺言書があっても有効なものでなければ、原則としては民法の法定相続分どおりに分配されることになってしまいます。
以前に解説したとおり、配偶者は常に相続人となりますから、第一順位の子供グループに被相続人が亡くなった時点で生きている人がいた場合、配偶者と子供グループで1/2ずつになります。
次に、被相続人が亡くなった時点で子供グループに生きている人がいない場合は、親グループに1/3、配偶者に2/3です。被相続人が亡くなった時点で子供グループにも親グループにも生きている人がいない場合は、兄弟姉妹に1/4、配偶者に3/4です。
これが原則的な相続分となります。と言われてもなかなか難しいと思いますので、具体的な事例でみていきます。
事例で計算!
例えば、配偶者と子供A、B、Cの3人がいた場合、配偶者がまず1/2です。
そして子供グループ、つまり子供3人で1/2、子供たちの中では全員実子、つまり嫡出子であるため差がありませんので、その1/3を3人で均等に分けることになり、1人当たり1/6(1/2×1/3)ということになります。
もし子Aが嫡出子、つまり配偶者との間に生まれた子供ではない、でも認知を受けた子供の場合は、非嫡出子は嫡出子の1/2になります。
なので、子供グループの中でAは1/5、BとCはそれぞれ2/5が取り分となってAは相続財産全体の1/10、BとCはそれぞれ2/10となります。
それでは、実際に金額を当てはめてみます。この事例は配偶者と子供3人が相続人で遺産が600万円という場合です。配偶者は1/2ですから600万円の1/2で300万円が相続額となります。
一方、子供はまず全員で1/2の300万円となって、その後子供の頭数で割ることになりますので、それぞれは1/3、つまり1人当たり100万円ということになります。
事例で計算パート2!
次の事例でもみていきます。この事例では子供や孫など子供グループがいないため、初めて親グループが登場します。
親グループに存命者が1人でもいると兄弟姉妹は出る幕がありません。この場合、配偶者は遺産600万円の2/3である400万円、親グループは全員で600万円の1/3である200万円となります。
そして、被相続人の父と母が存命ならば1/2ずつです。両親ともに生きていらっしゃる場合は1/2ずつで100万円です。もしどちらか1人のみであれば、全額200万円を相続することになります。
配偶者がいない場合は?
民法ではここまでの定めですが、よく相談を受けますので、配偶者がいない場合についてもここで説明しておきます。
相続というのは1/2の確率で、1/2は配偶者がいない場合となりますけれども、この場合は配偶者がいないものとして、つまり配偶者は常に相続人となるという部分を考えないでいいわけです。
子供だけの場合は子供がすべて100%、配偶者と子供や孫がいない場合は直系尊属がすべて相続することになります。
ところで、遺産を分けるときによく相続人同士でもめるのは、生前に特別にお金を多くもらっている人がいるケースです。「もうもらう分はないでしょ」というように、他の相続人から詰め寄られたりするケースがあります。
これを「特別受益」といって、生前に他の相続人にはないのに、特定の相続人だけにお金や財産をあげていた場合です。
特別受益とは?
例えば、長男、次男、三男が相続人の場合に、次男にだけ開業資金の提供をしたとか、あるいは多額の留学費用を出してあげたとか、そういう場合です。
この場合は、その特別受益相当の金額も相続財産の中に最初に入れて計算して、次男の相続分の中から差し引くことで調整します。ちなみに、挙式など結婚費用、それから大学の新学費用などは、社会通念上過大な額でない限り特別受益とはなりません。
先ほどの例で考えると、3人のうち三男のみに大学に進学させたということがあっても、それだけで直ちに特別受益があったとは言い切れません。
前述のとおり、遺言書がない場合や遺言書があっても無効な場合、原則的にはこの法定相続分どおりに配分されることになります。
ですが、もし有効な遺言書があって、その遺言書に「全財産を愛人に遺贈する」と書かれていたらあなたはどうされますか?
生きているうちは家庭を顧みず、死んでからは愛人に全部持っていかれる、これでは踏んだり蹴ったりですよね。なので、民法は遺留分という制度を設けています。
遺留分とは?
遺留分というのは、相続人のうち配偶者と子供グループと親グループに、最低限の財産を確保する権利を与えたものです。
直系尊属のみ、つまり配偶者もいないし子供や孫もいない場合、親グループには法定相続分の1/3が保障されて、その他の場合、つまり配偶者のみ、配偶者と直系尊属グループ、配偶者と子や孫のグループ、そして子や孫のグループのみの場合、それぞれ法定相続分の1/2が保障されます。
ちなみに、兄弟姉妹には遺留分がありませんので注意して下さい。具体的には、配偶者が亡くなっていて両親がそれぞれ健在ならば、遺留分は1/3で法定相続分の1/2ずつですから、それぞれ1/6ずつの遺留分になり、残りは愛人のところにということになります。
トラブルの起きない遺言書とは?
争いの起きない遺言書のコツは、遺留分を侵害しない、つまり遺留分だけは残しておくというような内容で書くことが、円満な遺言書を書くコツになります。なお、遺留分は請求しないと効果が生まれませんので注意が必要です。