生命保険で相続対策する理由とその背景は?
なぜ相続対策には生命保険なの?
相続対策の方法には色々な手段があります。
生命保険以外にも不動産を使ったり信託を使ったり色々ある中で、今回は生命保険についてのお話です。生命保険というのは、非常に相続対策に向いていると言われています。なぜかというと、遺産分割および納税資金の準備には現金が必要になるからです。
現金があると大体問題は解決します。
それなら現金をどのようにして準備するのかということになるわけですが、相続人は被相続人の死亡により発生しますから、死亡時に多額の保険金という現金が支払われる「生命保険で準備するのがベスト」ということになるのです。
いつどれくらいの大きさの金額が準備できるのか、タイミングと金額の問題があるわけですが、これについては生命保険を超える手段はないといえます。ただ、生命保険は健康でないと加入できません。
なので、健康な人は若いうちから準備しておくと有効だと言われています。
相続に生命保険を活用する背景は?
まず相続を取り巻く環境についてです。実際には納税資金準備にも有効なのですが、相続税を支払わなければいけないほどの財産を持っている人は意外と少ないです。死亡者に対して相続税を支払った件数を見ますと、段々減っていて4%ちょっとです。
逆に言うと、95%超の人たちは相続税を支払っていません。つまり、支払わなくていいほどの財産しかないということです。納税の対策をしなければいけない人というのは4%くらいしかいないのですね。
では、そうでない人たちはどうなのかというと、相続財産はどのような形で相続されているのかというのが国税庁のホームペーに統計が出ています。これを見ると、以前よりは少なくなっているものの、不動産で財産を持っている人が過半数です。
そうすると・・・
相続人が1人だけだったら「あなたが継いでね」ということで、また相続税がかからないくらいの財産であれば何の問題もないのですが、相続人が複数いる場合はこれを分割しなければいけません。
遺留分を侵害してしまうと、「遺留分を返せ」と訴訟を起こされてしまうと返さなければいけなくなってしまいますからね。
ですが、不動産ですと「現金がないからどうしよう」ということで非常に困ってしまいます。自宅の土地と建物だけでそれを半分に分けようといっても、これは後々の争いの種になりますのでそう簡単にはいきません。
つまり、相続人間での分割が難しいという問題を抱えているのです。
それを表すかのように、納税があっても遺産分割で問題が発生するケースは多く、最高裁判所の統計情報によると、相続関係にかかる相続相談件数は平成22年度で177,125件となっています。
これは、平成22年に亡くなった人というのが約119万4千人ですから、この件数を死亡者数と見ると、なんと14.8%の割合で家庭裁判所に相続に関する相談をしているわけです。
具体的には・・・
周りの人で亡くなった人が10人いると、そのうちの1人か2人くらいのご遺族は相談をしているということです。これは、結構高い確率ですよね。以前よりどれくらい増えたかというと、平成16年が108,527件ですから1.7〜1.8倍です。
一方で、亡くなった人は平成16年から1.7〜1.8倍までは増えていませんから、確実に割合は増えてきているのです。
ただ、これは相談なので、特に裁判所の判断を仰ごうとか、審判とか調停まで進んでいないものも含まれています。ですが、この審判および調停の中で遺産分割に関する処分というのは、平成25年で11,472件と結構な数になっています。
このように、実は遺産を分割することが多くの人にとって一番の問題になっているのです。なので、遺産分割にはキャッシュがあると問題が解決されるのです。だから生命保険がよいという話になってくるのです。
生命保険で相続対策する理由は?
生命保険で準備する理由の1つは、税金を節約する効果があるからです。死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になるので、たくさん保険金を遺族に残すとそれにも相続税がかかってしまいます。
ただし、非課税枠「500万円×法定相続人の数」というのがあります。例えば、奥さんとお子さん2人がいて法定相続人が3人の場合は、500万円×3人=1,500万円を死亡保険金から控除して、相続税の課税対象から外すことができます。
また、死亡保険金のほかにも、会社が支払う死亡退職金あるいは弔慰金、これらについても同じように非課税枠があります。しかも、これは別々に使うことができます。
なので、例えば、社長が個人で保険に入って息子に死亡保険金を支払いました、これには死亡保険金の非課税枠が使えます。また、会社に死亡保険金を支払ってその死亡保険金を原資に死亡退職金を支払いました、これにも非課税枠が使えます。
そして、死亡保険金を受け取った会社が弔慰金を支払いました、これにも非課税枠が使えます。よって、計画的に組み込んでいけば、かなりの非課税枠を使うことができます。
もう1つの理由は・・・
これは資産家の方になるのですが、課税相続財産が3億円を超えると、贈与税、相続税、所得税で、相続財産は半分持っていかれてしまいます。
一方、贈与税も高額になると高いのですが、低いところでは税率が安いだけではなくて、基礎控除といって1年間に110万円までなら税金のかからない贈与ができます。ここも非常に使えます。
また、所得税、これは一時所得という話になるのですが、生命保険を活用する場合、生命保険を解約して受け取ったお金にプラスの利益があると、これは一時所得として課税されます。
ただしこれについては、50万円を差し引いた後さらに1/2にできるというメリットがあります。
なので、大きな財産を小分けにして毎年毎年110万円の基礎控除を使いながら、また低い税率で贈与しながら、最後は受け取った時に一時所得で50万円引いてさらに課税所得が1/2にできるということを計画的に組み込んでいくと、相続税を支払うより贈与税と一時所得の所得税を支払った方が、税金の負担は少なくて済むということが可能になります。
ただ、これもケースバイケースです。財産がそれほど多くない人は、この方法を使ってもあまり意味がないですからね。