自筆証書遺言の書き方と検認手続き
遺言控除とは?
今回は、自筆証書遺言についてのお話です。まず遺言執行者についてです。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを中心となって進めていく人のことを言います。遺言書を書くに当たり、遺言執行者を誰にするのか迷うこともあると思いますが、遺言執行者は必ずしも決めなければならないものではありません。
つまり、遺言執行者を決めておかなくても、遺言書自体が無効になることは当然ありませんし、何の問題もなく相続手続きに取りかかれるということです。
検認手続きとは?
続いて、検認手続きについてです。自筆証書遺言を発見すると、まず初めに家庭裁判所にて検認手続きの申請を行わなければなりません。検認の手続きなく勝手に遺言書を開封した場合には、5万円以下の罰金が課せられますので注意して下さい。
ちなみに、公正証書遺言の場合には、検認手続きは必要ありませんので、遺言書を発見し次第、すぐに開封することができます。
検認手続きを行う目的としては、遺言書が偽造されていないか、また遺言書の偽造防止のためです。つまり、遺言書の確認と偽造防止が目的であるため、遺言書が有効であるか無効であるかを判断する手続きではないということは覚えておいて下さい。
検認手続きは完了するまで、およそ1ヵ月はかかるとみておいた方がいいです。つまり、その間は、遺産分割協議に着手することはできないということになります。場合によっては、1ヵ月以上の時間を要することもありますので、この点が一番のネックになります。
付言とは?
続いて、付言(ふげん)についてです。付言とは、一言でいうと「相続人へ向けたメッセージ」です。付言を書いたことで“大きなトラブルを避けられた”といった事例は数多くあります。付言はそれだけ大事な役割を担っていますので、必ず明記するようにしましょう。
例えば、相続人が子供3人の場合で、明らかに財産の分け方が不平等である遺言書が発見されたとします。財産の分け方を淡々と書くのでは、相続人全員が納得することはないでしょう。
しかしながら、そこへ付言を明記し、例えば、「長男である○○は家を守っていくに当たりたくさんのお金もかかるので、それを考慮して多めに相続させ。
また、次男、三男が困っているようであったら、長男である○○が必ず助け舟を出してあげること」など、何か一言を書くだけで、子供たちは親の気持ちを汲み取ってくれることでしょう。
また、自分の死がきっかけで、兄弟が今まで以上に一致団結してくれると嬉しいという気持ちや、今までの感謝の気持ちを述べることも重要なポイントになります。できれば、相続人全員に向けたメッセージを残しておくとなお良いです。
“遺言書は財産の分け方を書くものである”ということは大前提にありますが、相続人へ向けた最後の手紙でもあります。そのことをしっかり頭に入れて遺言書の作成に着手してみてはいかがでしょうか。
遺言控除とは?
遺言控除というのは、2017年中に導入予定の制度です。遺言控除はその名のとおり、遺言書を書くと相続発生時に、相続財産からある一定額が控除できるという制度です。
“終活”という言葉も流行り出しましたので、以前と比べると、遺言書を書く人の人数も増えてきました。ですが、それでもまだまだ日本では遺言書はポピュラーなものではありません。
ちなみに、公正証書遺言の作成件数は、平成元年から平成26年まで約2倍で増えていて、件数的に見ると平成26年には約10万件が作成されています。
かなり増えていると感じるかもしれませんが、現在、相続税の課税対象のうち、遺言書を残した案件は2〜3割程度にとどまっているのが現状です。アメリカでは遺言書は当たり前のように書かれているのとは対照的ですね。
なぜ遺言控除の制度ができたの?
遺言控除には、遺言書を普及させて相続トラブルを抑止し、スムーズな相続を実現させる意図があります。ちなみに、控除額は数百万円を軸に考えられています。国が遺言書の作成を斡旋しているということは、それだけ相続トラブルが深刻とも言えます。
実際に家庭裁判所における相続関係の相談件数は、年間約18万件もの相談が寄せられています。
割合的にみると、約15%の割合で相続トラブルが発生するとも言えます。また、相続財産が5,000万円以下の家庭における相続トラブルは、全体の8割とも言われています。
こうしたことを知ると、どれだけ遺言書が重要な役目を果たすのかということがお分かりいただけると思います。
もちろん、しっかり遺言書を作成していたのにもかかわらず、相続トラブルに発展してしまうケースもあるかと思います。一方で、遺言書があることで相続トラブルが避けられたといったケースも数多く存在します。
これを機に遺言書の作成や相続対策について見直してみてはいかがでしょうか?