自筆証書遺言のメリット・デメリット!
無効リスクとは?
遺言書を残す場合には、一定の法律のルールがあります。特に自筆証書遺言については、ルールが細かくいくつもあります。
例えば、遺言書の全文すべての文字を自分で自筆して書かなければいけないとか、日付と名前を入れなければいけないとか、その日付と名前も遺言者が自筆してかかなければいけないとか、そういったルールがあります。
つまり、最近はパソコンを使う人が多いですが、パソコンやワープロで作った自筆証書遺言はダメということです。
また、ハンコを押すのを忘れているのもダメです。このハンコは通常は実印で押すのですが、実印ではなくて認印や指印などでもよいとされています。ただ、争いを避けるために普通は実印ですることが多いです。
このように色々と細かいルールがあるのですが、自筆証書遺言にはメリットとデメリットがあります。
自筆証書遺言のメリットとは?
自筆証書遺言のメリットとしては、作成するのが簡単ということです。公証役場などに行って何か書かなければいけないとか、そういうのはありません。自分で思った通りに残された人のことを思って、自分の思いを手紙に書いてあげればよいのです。
また、ノートでも便箋でも何でもよくて、用紙と筆記用具さえあればいいので、費用がかかりません。これもメリットの1つです。ただ、デメリットもいくつかあります。
自筆証書遺言のデメリットとは?
1つは、遺言書に不備があると無効になってしまうということです。
法律で自筆証書遺言というのはこういうふうに作りなさいというルールになっていますので、その形式のルールを破ってしまうと、せっかく残された人のことを思って自分の思いを伝えたのに、全部無効では意味のないものとなってしまいます。
ですから、この点には十分注意して下さい。
2つ目は、遺言の有効性や内容が
争われやすいということです..
有効性というのは、形式面が整っていないとかそういったことです。内容に関しては、例えば、「本当に遺言を残した人がこんなことを書いたのだろうか」とか、内容が曖昧で「この内容は、こんな意味じゃないか、あんな意味じゃないか」とか、そういったことです。
相続人間で争いになってしまって、せっかく遺言書を残したのに、さらに争いになってしまうということがあるので注意が必要です。
3つ目は、遺言書が発見されないとか、
紛失・偽造のリスクがあることです..
自筆証書遺言というのは、書いてどこかにしまっておきます。
普通は誰にも見えないところにしまっておくと思いますから、発見されずにそのまま通りすぎてしまうということもあるわけす。また、誰かが保管しているわけではありませんから、誰かに破棄されたり偽造されるリスクもあります。
以上のように、自筆証書遺言には様々なデメリットや形式上のルールがありますので、遺言書を残そうと思ったら、一度専門家に相談してみるのもよいと思います。
公正証書遺言は文章を書かなくていい!
公正証書遺言はしゃべるだけで作成できます。
公証役場の公証人に希望を伝えるだけで作成できるのです。なので、自分で全く文章を書かなくてもいいのです。特に高齢者の方の中には、手が震えてしまったり、ほとんど目が見えなかったりして、長い文章が書けない方もいらっしゃいます。
そういう方でも、公証人との受け答えなど、判断能力さえしっかりしていれば、遺言書を作成することができます。
高齢者以外の方、例えば目や耳が不自由な方でも、通訳や補助の方を付けて公正証書遺言は作成することができます。公正証書遺言には、このようなメリットがあります。
一方、一般的には手書きの遺言書である自筆証書遺言の方が、紙とペンさえあれば作成できるので手軽で簡単とよく言われます。
ただ、これについては、専門家の立場からすると懐疑的です。実際、遺言書を作成する時には、手書きの自筆証書遺言の方が大変だからです。
公正証書遺言は、自分の希望、財産を誰に渡したいか、遺言書に書いてある手続きを誰に任せるかということを口頭で伝えれば、あとの文章はきちんと考えて法的にもしっかりしたものを公証人が作成してくれます。
一方、自筆証書遺言の場合は、これらも全部自分で考えて、法的に問題がないかとか、本当にこの書き方で自分の希望は叶うのかとか、残された家族は困らないかとか、そういったことも全部自分で考えて、文章も全部考えて、自分自身で書かなければなりません。
これは非常に大変ですしリスクもあります。
せっかく遺言書を作成したのに、後でトラブルになって、最悪の場合裁判になって、裁判の結果せっかく書いた遺言書が無効になってしまったら意味がありません。
遺言書というのは色々とルールがあって、そのうち1つでもルールが守られていないと、遺言書全体が無効になってしまいます。
そういうリスクがありますので、やはり遺言書は公正証書で作成しておくと、後に残された家族も助かるはずです。
なぜ相続対策で遺言書が有効なの?
相続については、よく親族間でもめるというのを聞いたことがあると思います。
皆さん、できることなら相続の時に、配偶者や他の兄弟ともめるようなことはなるべく避けたいと思っています。こうしたもめ事を回避するための一番有効な対策は、しっかりとした遺言書を用意しておくこと、これに尽きます。
なぜなら、相続でもめるのは「財産をどうわけるのか」というものが一番多いからです。
つまり、遺言書であらかじめ被相続人の意思表示をきちんとしておけば、それだけもめることも少なくなるのです。そういった理由から、相続でもめることを回避するには遺言書が有効だと言われるのです。
そうはいっても、遺言書なんて一生に一度書くか書かないかというものですから、「さあ、書いて下さい」と言われてもどうかいていいのかわかりませんよね。
遺言書の種類と自筆証書遺言の問題点
実は遺言書には3つの種類があります。
1つは自筆証書遺言、2つ目は公正証書遺言、3つ目は秘密証書遺言です。一番多いのは自筆証書遺言です。これは読んで字の如く、自分で書く遺言書です。ですから、費用はかかりません。書き直しも自由です。なので、利用者が多いのです。
ただし、すべての文章を遺言者(遺言を残す人)本人が手書きするのが決まりになっていますので、パソコンで書いたものは無効になります。また、作成年月日の記載や署名押印がないと、せっかく書いた遺言書が法律上無効になってしまいます。
さらに、内容の不備のために、相続人の間に却って混乱を生じさせてしまうケースも多々あります。しかも、自筆証書遺言は、相続開始後は家庭裁判所の検認が必要になります。要はチェックが必要になるということです。
ということで、自筆証書遺言は手軽に書けるのですが、それだけに色々と問題も多いのです。
自筆証書遺言が無効になるリスクとは?
公正証書遺言の場合は、公証役場というきちんとした役場で作成するので、無効になるリスクというのはほとんどありません。一方で自筆証書遺言の場合は、自分で作成するものですから、無効になるリスクがつきまといます。
私自身が携わってきた事例でもそうですが、同じような相続手続きの業務に携わっている者と話しをしていると、やはり自筆証書遺言で何も問題なく手続きができるケースは少ないと皆が口を揃えて言います。
日付が抜けているとか、名前が書いていないとか、そういったそもそも遺言書の体をなしていないというケースよりも、どちらかというと、一応遺言書としての体はなしているのだけれど、書き方が微妙で判断に迷うというケースの方が圧倒的に多いです。
一応、本に書いてあるようなことはきちんと書いてはあるのですが、言い回しだったり、財産の特定だったり、どうしても微妙な解釈、何とでも解釈できるような書き方をしているので、どうしようかというケースが多いです。
そうすると、例えばその遺言書を銀行に持って行っても、銀行がすぐに手続きしてくれないのです。
やはりそのような微妙な言い回しだと、後からトラブルになる可能性があるからです。他の相続人から、「そういう意味ではなかったんじゃないの」と言われたら銀行が困りますからね。
そういうこともあって、手続きがスムーズに進まないこともよくあるのです。