ジュニアNISA(ニーサ)で相続税対策!
贈与税の基礎控除とは?
ジュニアNISA(ニーサ)は、未成年者が口座開設者になります。すると、年間80万円までの毎年の投資原資をどのように作るのかということになります。
少し極端な話をすると、0歳の赤ちゃんから口座開設が可能ですから、この0歳の赤ちゃんがどのように80万円を作るのかということになるわけです。一般的には、両親や祖父母から生前贈与した資金が、このジュニアNISA(ニーサ)の投資原資になります。
そうすると、当然、ここは資金の贈与ということになりますから、贈与税の課税問題が発生します。
ちなみに、贈与税という税金は、基本的には1月から12月の1年間に贈与を受けた人が、どれだけの贈与を受けたのかという金額を合計して、110万円の基礎控除と呼ばれるものを引いて、残った金額に対して10%〜55%の超過累進税率で贈与税が課税されます。
つまり、贈与を受けたお子さん、お孫さんに対して課税されることになるのです。ただし、贈与税の基礎控除額は年間110万円ですから、ジュニアNISA(ニーサ)の投資資金として80万円贈与するだけなら課税問題は発生しません。
一方、ジュニアNISA(ニーサ)の80万円だけでなく、それ以外にも贈与がある場合には、それらを合計して110万円を超えると贈与税の課税問題が発生しますので注意が必要です。
ジュニアNISA(ニーサ)で相続税対策とは?
平成27年から相続税の課税強化ということで、例えば、基礎控除が大幅に下がったりとか、最高税率が50%から55%に上がることになりました。
ある意味、この基礎控除が下がったことによって、相続税というものが非常に身近な税金になってきたと言えます。実際、相続対策を検討したり、すでに行っているという人が増えています。
この相続対策の1つとして、前述のジュニアNISA(ニーサ)を使った生前贈与が非常に有効な対策になり得るのです。
一般的に相続対策というのは、相続税を減らすことだけではありません。当然のことながら、納税資金をどのように確保するのかという納税資金対策、あるいは相続争いにならないような争族対策も必要になってきます。
一般的には、これら3つの柱があると言われています。
ただ、これらに加えてもう1つ、持っている資産の価値を保全するという“資産保全対策”も重要な相続対策として考えていただきたいです。
というのは、持っている資産の価値がどんどん目減りしていくと、お子様などに残す財産がどんどん目減りしていってしまうからです。なので、しっかりと資産を保全するという考え方も、相続対策の中で考えていただきたいです。
よく相続税のことばかりが気になって、無理な相続税対策をした結果、相続争いになってしまったとか、あるいは、自ら資産価値を目減りさせてしまったなどといったケースがあります。こうしたことは、相続対策ということを考えるとあまり好ましくありません。
当然、相続対策の1つの柱として税の軽減はありますが、これだけに目がいってしまうと、それ以外の部分でよろしくない結果になってしまいますので、バランスよく考えるのが大切です。
そんな中でもやはり気になるのは、この相続税を何とかしたいという相続税の軽減対策です。
相続税対策の考え方とは?
前述のとおり、やはり相続税の軽減対策には、生前贈与が効果的です。
一般的には、相続税というものは、亡くなった人が持っていたプラスの財産からマイナスの財産、すなわち、資産から負債を差し引いた純財産に課税されます。
なので、相続税を減らすということは、この純財産を減らすという考え方になります。そうすると、アプローチとしては、資産を減らすか、あるいは、負債を増やすかになります。
よく負債を増やす、つまり、借金をすれば相続税対策になると言う人がいるのですが、これは少し話が違います。
相続税というのは純財産に課税されるので、例えば、1億円の借金をして1億円の預金をしていた場合、資産1億円、負債1億円なので純財産には変化はありません。
一方、例えば、1億円の借金をして投資不動産を買った場合、このプラスの不動産の評価が1億円から6千万円に下がってくると、資産が6千万円に対して負債が1億円ですから、純財産はマイマスになります。
基本的には相続税対策というのは、借金を増やすというアプローチではなく、資産を減らすということを考えていきます。
そうすると、資産を減らすというアプローチの中で、本当に資産を減らすアプローチと、形式的に相続税の評価上のみ資産を減らすアプローチが出てきます。
一般的には、よく「相続税対策には不動産投資が良い」と言われるケースがあります。これはどういうことかというと、例えば、1億円の預金を持っていると1億円で課税されてしまいます。
一方、1億円で投資不動産を買うと、この1億円の投資不動産の相続時の評価額が例えば6千万円に下がります。つまり、1億円の財産が6千万円に減るので、この分相続税がお得になるというわけです。
しかしながら、この仕組みには注意も必要です。というのは、確かに1億円で投資不動産を買うと評価は6千万円に下がるかもしれませんが、この投資不動産を最終的に処分しようと思った場合に、6千万円でしか売れなければ、全くやっている意味がないからです。
つまり、評価だけを下げるようにしないといけないということです。
評価は6千万円に下がっても、買った投資不動産は将来1億円で実際に売れなければ、結局は資産価値が目減りしてしまうことになるからです。当然、資産が目減りすれば相続税は減りますが、自らの財産が減って相続税が減るのは対策とは言えません。
よって、この辺りは慎重に考えないといけないわけですが、なかなか難しいものなのです。そこで、もっとシンプルに資産を減らす方法はというと、簡単な方法である実際に減らすというアプローチになるのです。
実際に資産を減らす相続対策アプローチとは?
これは非常に簡単な話です。実際に資産を減らす相続対策というのは、“使ってしまう”というアプローチです。子どもたちに財産を残していても、相続で争いになってしまうのでロクなことにならない。それなら自分たちで使ってしまおうというアプローチです。
これも確かに1つのアプローチです。とはいえ、なかなかそこまで割り切れる人も多くありません。そこで、もう1つのアプローチとして、“あげる”というアプローチが出てきます。
そうすると当然のことながら、資産をあげる、つまり贈与すると、贈与した人の財産は減ります。すると、相続税は確実に減ります。ただし、贈与すると、贈与された人に対して贈与税が課税されます。つまり、相続税は減りますが、贈与の際に贈与税が発生することになります。
例えば、お子さんやお孫さんに財産を生前贈与したという場合、相続税は1,000万円減ったけれど贈与税が1,500万円発生した、というのでは意味がありません。なので、「贈与税というのは相続税と同じ税金である」ということはよく考える必要があります。
ちなみに、贈与税の位置づけは、亡くなるまでじっと財産を持っていると、その財産に対して相続税が課税されますが、生前にお子さんたちに渡すと、生前に相続税が課税されるというものです。要するに、相続税で支払うのか贈与税で支払うのかということなのです。
当然、相続税も贈与税も、財産に対する税率は超過累進税率を採用していて、10%〜55%です。
相続税率が20%の人が、30%の税率での生前贈与は行いませんよね。ですから、将来、相続税が20%課税される見込みの人なら、相続税率20%以下の税率を使って生前贈与をしていくということになります。
例えば、贈与税の税率が10%で相続税の税率は20%だったとしたら、先に贈与税を支払っておくことによって差額10%が節税になります。これが一般的には生前贈与の効果と言われているものです。
やはり正しい生前贈与を行うためには、正しい現状把握を行いながら、今万が一相続があった場合に、相続財産に対して何%くらいの税率で相続税が課税されるのか、これをしっかりと捉えて、その税率以下のところで生前贈与を行うことが重要です。
ジュニアNISA(ニーサ)で生前贈与するメリットは?
前述のような正しい生前贈与を行うと、5つのメリットが得られます。
1つ目のメリットは、税負担を相続税よりも軽くすることができるということです。
2つ目のメリットは、贈与により所有資産の将来の評価アップを排除できるということです。
贈与した財産から発生する収益や値上がり益は、もらった人に帰属します。先に渡してから大きく増やそうという発想ですね。この発想なら、将来評価が上がりそうなものから優先して贈与するのがおすすめです。
3つ目のメリットは、贈与者の意思によって贈与できるので、将来の争族問題を防ぐことができることです。
4つ目のメリットは、孫などへの贈与によって、相続を一代飛ばすことができることです。贈与というのは、お子さんだけではなく、お孫さんなど誰にでもできます。そうすると、お孫さんに生前贈与することによって、相続を一代飛ばすことができるのです。
5つ目は、税務リスクを回避することができることです。
上手く生前贈与を行っていくと、相続税の軽減対策に非常に有効になります。
ジュニアNISA(ニーサ)で生前贈与する方法とは?
ここで生前贈与の上手いやり方をポイントでまとめていきます。
基本的に贈与というのは契約です。口頭でも成立しますが、やはり証拠を残すという観点からは「贈与契約書」を贈与の都度作っていくのが重要です。ちなみに、書面によらない場合はいつでも取消し可能なので注意が必要です。
よって、まずは現状把握を行うのが大切ですから、これをやりながら、お子さんやお孫さんに贈与契約書をその都度作りながら贈与していくというのが基本的な考え方になります。
ただし、これもあくまでも形式的な話です。実質的に税金の世界で本当に贈与が行われたかどうかの決め手になるものがありますので、ここはよく認識しておいて下さい。
贈与をした後、贈与をした財産は誰が管理をするのかということですが、基本的にあげたわけですから、贈与を受けた人がその財産を支配・管理運用していくのが当然です。
つまり、生前贈与というのは、財産をあげるわけですから、もらった人が自由に使える状態になっているということが重要な要素になるのです。
ここが現実的にできていない人が多いのです。例えば、お子さんやお孫さんの通帳を作り、そこに単純に資金を移動していくケースです。相変わらず、その通帳や印鑑は、贈与した両親や祖父母が管理しているような場合ですね。
これを名義預金と呼びます。名義はお子さんやお孫さんですが、実質的に支配・管理しているのは両親あるいは祖父母ですから、「この財産はお子さんやお孫さんの財産ではないですよね」ということになり、将来、相続税の税務調査で問題になることが多いです。
ですから、せっかく正しい生前贈与をするのであれば、しっかりと財産を渡しきるのが重要となってきます。贈与した財産は、もらった人がしっかりと支配・管理できているという状況を作ることが重要なわけですが、なかなかできていません。
財産をあげてしまうと子どもたちが使ってしまうということがよく言われますが、あげたわけですから、子どもたちが自由に使えなければいけないのです。
ただ実は、単に使ってしまうのが嫌なのではなく、無駄に使ってしまうのが嫌なのですね。
ですから、その贈与した大切な資産を無駄に使われないようにするという意味でも、ジュニアNISA(ニーサ)に資金を移せば、18歳までの払出し制限の中で確実に資金を貯めることができる仕組みが作れます。
つまり、贈与したお金を無駄に使われないという意味で、ジュニアNISA(ニーサ)は引き出し制限がかかっているので、これを前向きに捉えれば上手く活用できるはずです。
定期贈与(連年贈与)の注意点は?
ジュニアNISA(ニーサ)以外にも、毎年110万円まで贈与する方法がありますが、連年贈与(定期贈与)になると将来課税されるリスクが出てくるので注意が必要です。
連年贈与(定期贈与)というのは、毎年毎年同じ時期に同じ金額を贈与するというものです。
例えば、毎年110万円ずつ10年間贈与するといったような定期の給付を目的とする贈与契約です。この連年贈与(定期贈与)と認定された場合には、定期金に関する評価で贈与税の課税が行われますので注意して下さい。
この場合は、毎回毎回確実に贈与契約書をその都度作りながら手続きを行っていくことによって、こうしたリスクは回避することができます。
生前贈与というのは続けることが重要です。将来の相続税が心配だから少し生前贈与対策を考えようと思っている人なら、できるだけ早く贈与にとりかかって、少しずつ長い期間で生前贈与を続けていくことをおすすめします。
贈与税は超過累進税率です。一度に大きな金額を贈与すると、税率が一気に上がってしまいます。
なので、少しずつ多くの人に長い期間をかけて生前贈与を続けるのが重要なポイントになります。こうした点からも、例えばジュニアNISA(ニーサ)は生前贈与のリズムを作るきっかけにもなります。
ジュニアNISA(ニーサ)を活用することが生前贈与対策になるわけではありません。ジュニアNISA(ニーサ)は、あくまでも生前贈与した資金を確実に守り、無駄なお金を使わずに、お子さんやお孫さんの将来の資産形成に役立てることができるツールだからです。
そういったツールとしてジュニアNISA(ニーサ)を活用することをおすすめします。