事例で検討
以前からA社の株式を2,000株所有しています。この度、A社が増資に伴う新株の割り当て1,000株を受けたので、銀行から資金を借りて新株払込金の全額にあてました。
翌年、土地の購入資金にあてるため、この株式のうち500株を売却しました。その際、新株払込金にあてた借入金の返済はしていません。
この場合、この年の配当所得の計算上控除する負債利子は、どのように計算したらよいのでしょうか?ちなみに、この年分のその借入金の利子は12万円です。
アドバイス
ご質問の場合ですと、譲渡した500株に対応する負債利子は、譲渡前の期間に対応する部分も含めて、配当所得からは控除できません。
同じ銘柄の株式の一部を借入金で取得し、
その後、一部譲渡した場合は?
同じ銘柄の株式の一部を借入金で取得し、その後、一部を譲渡した場合の利子の計算方法はどうなるのかということですよね?
まず、配当所得が生ずる元本を取得するためにかかった負債の利子で、その元本の所有期間に対応する部分の金額は、その元本からの配当収入からだけではなくて、他の株式の配当収入からも控除することができることになっています。
そして、同じ銘柄の株式の一部を負債で取得し、その後、一部を譲渡した場合には、負債を、その銘柄の株式の譲渡直前の総数に占める譲渡直後の総数の割合であん分することになっています。わかりやすく式で表すと次のようになります。
↓↓↓
譲渡直前のその銘柄の株式等を取得するためにかかった負債の額 × 譲渡直後のその銘柄の株式の数 / 譲渡直前に持っていたその銘柄の株式総数
※譲渡後、負債の一部が弁済された場合は、その弁済は、譲渡した株式等の負債から順次行われたものとされます。
なぜ、上記のような計算になるの?
これは、同じ銘柄の株式を何回かにわたって取得した後に、一部を譲渡した場合には、取得の時期の前後を問わず均等に譲渡されたものとみるためです。
つまり、同じ銘柄の株式の取得価額は、その取得や譲渡があった都度計算し直すということになっているのです。
私の場合はどうなるの?
申告分離課税の適用を受ける株式等の譲渡については、それが事業所得、譲渡所得、雑所得の基因になった元本の取得にあたる場合には、それにかかった負債の利子は、配当等の収入金額からは控除しないことになっています。
よって、ご質問の場合も、譲渡した500株に対応する負債の利子は、譲渡前の期間に対応する部分も含めて、配当所得の収入金額から控除することができません。具体的には、控除できる負債の額は、次の計算により10万円にまります。
12万円× {(2,000株+1,000株)−500株} / (2,000株+1,000株) = 10万円