年金世代間格差問題はマクロ経済スライドのせい!

 

 

年金の世代格差問題は広がっているのは

マクロ経済スライドのせい?

 

 

最近、厚生労働省は「納めた年金保険料に対して、どれだけの年金給付が受けられるのか」というのを世代ごとに試算して、その結果を公表しました。

 

これを見ますと、厚生年金に加入する会社員の夫と専業主婦の家庭の場合を例に、2015年に70歳になる世代は、負担した保険料の約5.2倍の年金を受け取ることができるとのことでした。

 

一方、30歳になる世代では、負担した保険料の2.3倍の年金しか受け取ることができないことがわかったそうなのです。これがよく言われている「年金の世代間格差」というものです。

 

より具体的には、2015年に70歳になる世代では、現役時代に収めた年金保険料の負担額はおよそ1,000万円なのに、年金を5,200万円受け取るということです。すなわち5.2倍です。

 

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また、2015年に30歳になる世代では、2,900万円の年金保険料の負担額に対して、6,800万円を受け取る予定になっています。すなわち2.3倍です。

 

さらに、これが2015年に40歳になる世代では、2,400万円の年金保険料の負担額に対して、5,900万円を受け取る予定になっています。すなわち2.4倍です。

 

 

なぜ年金の世代格差問題は広がっているの?

 

若い人の方が年金受取額の絶対額が大きくなっている理由は、平均寿命が現在70歳の人よりも、今30歳の人の方が寿命が長いからという想定があるからです。ただし、絶対額は多くても負担している額も多いので、年金の世代格差は広がっているのです。

 

ちなみに、所得代替率というものがあって、これは65歳時点で受け取る年金月額が、現役世代の月収の何%に該当するのかという指標になっています。

 

平成26年の厚生労働省の試算によると、所得代替率は62.7%となっています。これは、現役時代に稼いで金額の62.7%の年金を受け取るということですから、つまり、約4割も減ってしまうということになるのです。

 

 

年金問題は試算の前提にある?

 

年金のための試算というのは、モデル世帯というのを作って、それを前提にして計算をしています。

 

例えば、今回発表された年金の保険料負担と受取額の倍率であったり、所得代替率に関しては、会社員の夫が平均賃金で40年間働いて、妻はその40年間ずっと主婦だったという場合を想定して計算しています。

 

ですから、例えば、夫が個人事業主であるとか、妻も働いていて共働きであるという場合は、また全然違う数値になってきます。

 

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受け取る年金額が増えているって本当?

 

少子高齢化の進む日本では、年金に対する不安を持っている方は多いと思います。実際、「自分の時になったら少ししかもらえないだろう」と思っている人も少なくないはずです。

 

でも実は、受け取る年金額自体は増えているのです。2015年4月度の年金月額は、前年比べて、厚生年金で+2,441円、国民年金で+608円増えているのです。「減っていっているんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は増えているのです。

 

ただし、これにはカラクリがあって、実質的には年金受取額は増えていません。その理由は、年金受取額が物価の上昇率に追いついていないからです。

 

 

本当は年金受取額は減っている?

 

本来、私たちは、これが値上がりしたとか、値下がりしたとか、物価変動の中で生活しています。

 

物価が2%上昇すれば、基本的に私たちの生活するための支出は、同じ2%増えますので、受け取る年金も2%増えないと、実質的には減っていることになってしまうのです。

 

例えば、ある年の年金月額が20万円だったとして、翌年、物価が2%上がったとすると、年金も2%、すなわち20万4千円もらわないと、プラスマイナスゼロになりません。つまり、これが起きていないということなのです。これは、マクロ経済スライドという制度のせいなのです。

 

 

マクロ経済スライドと年金問題

 

公的年金は、これまでは原則として、新たにもらい始める人というのは、賃金の変動率で計算されていました。また、すでにもらっている人というのは、物価の変動率によって、毎年改訂されてきました。

 

ところが、このマクロ経済スライドという制度では、現役世代の減少率(少子高齢化のこと)や、平均余命の延びを勘案した、「調整率」というのを新たに設定しました。

 

そして、その調整率分を賃金や物価の変動率から差し引いて改訂することになったのです。つまり、従来とは計算方法が変わったのです。

 

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ちなみに、この調整率は、当面は1%前後というのが見込まれていて、要はその分、物価の上昇率に追いつかない状況が、今後しばらく起きてくると言われています。

 

実はマクロ経済スライドというのは、平成27年度から実施されていて、今後もしばらく続いていくものと思われます。

 

政府は、希望出生率を1.8%まで引き上げると言っていますが、今まさに少子高齢化が進む日本に、現役世代の減少率によってもらえる年金が減ってしまうという計算方式が導入されたということは、本気で少子高齢化を何とか食い止めようということの現れなのかもしれません。

 

これまでの年金の計算というのは、人口がきちんと増えていって、世代間の人口バランスもしっかり取れていくだろうという前提のもとで作られた制度だったのです。この前提を作った当時は、まさか今の日本のような現状になっているとは想定していなかったのでしょう。

 

現状のままではやっていけないということがわかったわけですから、このマクロ経済スライドを導入するのも致し方ないのかもしれません。私たちが老後の不安を解消するためには、自助努力をして、年金のカバーをしていくしかなさそうですね。

 

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