取締役に就任し、退職金を受け取ったのですが、これは、退職所得になるのですか?

事例検討

 

このたび取締役に就任したので、それまで使用人として勤務していたことの退職金2,000万円が支給されました。

 

取締役に就任しても、実質的な職務内容に変更はないのですが、これは退職所得になるのでしょうか?

 

アドバイス

 

役員に昇任した際の打切支給される退職金は、一定の要件に該当するものは退職所得になります。

 

退職所得は、なぜ税金が軽減

されているのですか?

 

退職所得は、給与所得者が退職することにより一時に受け取る給与であり、永年の勤務に対する報酬の性格をもっています。また、退職後の生活の支えとなるものでもあります。こうした理由から、退職所得に対する税金は軽減されています。

 

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実際には退職していない打切支給される退職金も

退職所得になるの?

 

打切支給される退職金についてですが、これは退職に伴って支給されるものではありませんので、本来の意味での退職所得ではありません。しかしながら、反面、永年の勤務に対する後払い給与としての性格ももっています。

 

ですから、実務では、使用人から役員に昇任した際に、使用人であった期間の退職手当等として支払われる給与については、その後の退職の際に支払われる退職金の計算をするときに、使用人だった期間を一切含めないという条件がある場合に限って、退職所得として取り扱っています。

 

 

私の場合はどうなりますか?

 

ご質問の場合は、次のどちらも満たせば退職所得になることになります。

 

■支給された2,000万円が、退職金として相当な額であること

 

■将来支給される退職所得の計算の際には、今回の退職金の計算の基礎になった勤続期間が一切含めないこと

 

 

退職金は所得控除額が

非常に優遇されています

 

まず退職金を受け取った場合には、所得税は以下のような算式で計算されます。

 

■退職所得=(収入金額−退職所得控除額)×1/2

 

収入金額というのは、源泉などされる前の退職金の額面の金額です。退職金というのは、税金を計算する上でもの凄く優遇されています。それが「−退職所得控除額」の部分です。この退職所得控除額がどれぐらいマイナスできるのかというと、

 

@勤続年数が20年以内までの場合・・・40万円×勤続年数
A勤続年数が20年を超えた場合・・・800万円+70万円×(勤続年数−20年)

 

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要するに、勤続年数が20年までは1年当たり40万円で、20年を超えた部分については1年当たり70万円ということです。例えば、Aさんは勤続年数が20年で800万円の退職金を受け取ったとします。すると、

 

(800万円−40万円×20年)×1/2=0円

 

となり、所得が発生しないことになります。つまり、Aさんは800万円の退職金を受け取っても、全く課税されないということです。このことからも退職金というのは、非常に優遇されているのがわかると思います。

 

例えば、Bさんは勤続年数20年で900万円の退職金を受け取ったとします。すると、

 

(900万円−40万円×20年)×1/2=50万円

 

となり、50万円が課税の対象になります。実はこの課税対象の50万円ですが、他の収入と合算などせずに、退職金の場合は退職金単独で税率を掛けることになっています。つまり、50万円に相当する税率でいいので、税率はかなり低くなるのです。

 

このように退職金というのは受け取る側にとっては非常に優遇されているものなのです。

 

 

勤続年数が5年以下の役員就任や

取締役就任は要注意!

 

勤続年数が5年以下の役員の場合、「×1/2」の部分がありません。ですから、勤続年数が5年以下の役員の退職所得は以下のようになります。

 

■退職所得=(収入金額−退職所得控除額)

 

 

法人化すると節税になる?

役員就任や取締役就任の退職金

 

そもそも個人事業では自分に対して退職金を支給するという考えがないので、退職金という概念が存在しません。

 

一方で、個人事業では、同一生計親族の青色事業専従者給与という形で、青色申告の手続きをしたら給与を支払えたり、賞与を支払ってそれが経費になったりします。

 

それでもやはり退職金というものはありません。つまり、本人も同一生計の家族も退職金はもらえないのです。

 

これに対して、法人の場合は、代表取締役や取締役に退職金という形で支給ができるわけで、この点が大きく異なります。

 

役員就任や取締役就任で退職金が経費として支給できるのです。これは法人化のメリットと言えます。しかも、これは目先の数年の話しではなくて、長期的に資産を形成していく上で大きく変わってくるものです。

 

退職金を支払った法人としては退職金がすべて経費になり、受け取った側はほとんど所得が発生しないのですから節税になるわけですね。

 

ただし、注意点としては、支払う退職金を目一杯支払うのではなく、やはりそれまでの貢献度などに応じて支払うようにするということです。そうでないと、過大な役員退職金として否認される恐れもあるからです。

 

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