事例
第1種低層住居専用地域の中に住んでいるのですが、昨年、家の隣に高層マンションが建設されたせいで、冬至の日照が1日約3時間になってしまいました。
家屋の損耗や光熱費なども目立ってきたので、マンションの所有者と交渉し、その損害の補償金80万円を受け取ったのですが、 この補償金に税金はかかるのでしょうか?
なお、住居は、日照・通風・採光の回復は移転以外には望めそうにありません。
アドバイス
あなたが日照妨害により受け取った補償金は、心身に加えられた損害によって支払を受けた慰謝料等に類するものとして、おおむね税金はかからないものと思われます。
日照妨害などで慰謝料や損害賠償金などは
もらえるものなの?
日照妨害は、他の生活妨害(騒音・臭気・大気汚染・・・)などより、日照という自然の恩恵を受けられなくなったという点では、消極的ですが、その侵害の程度が、社会通念上一般に受忍される限度をこえるような場合には、不法行為があったものとされています。
裁判例でも、加害者に対して慰謝料の支払を命じたものもあります。
日照妨害による慰謝料や損害賠償金に
税金はかかるの?
相手の不法行為によって、個人が受け取る慰謝料や損害賠償金などは、次のような範囲を決めて、所得税では税金がかからないものとされています。
■心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務または業務に従事することができなかったことによる給与または収益の補償として受けるものを含みます。)
■不法行為その他突発的事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金
■心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金
日照妨害により受け取った金銭等は、
上記の規定にあたるの?
日照妨害等により受け取る金銭等が、これらの規定に該当するのかどうかは、その実情にそって、個別に判断することになります。
ただ、損害賠償金の名目だけでは、判断しがたいものですので、現在までの裁判例などを参考にして、おおむね次のような点を考慮して、日照妨害に対する損害賠償請求に理由があるかどうかが判断されているものと考えられます。
■被害の程度
■被害を回避する方法の有無
■日照を妨害した建物が社会的に有用かどうか
■加害者に害意があったかどうか
■加害者が損害防止の措置をとったかどうか
■建築基準法違反の有無
■その地域の場所的性質
私の場合はどうなりますか?
あなたの場合は、金額が当事者間の話し合いで決められていますので、明確な結論は得にくいと思われます。
ですが、冬至の日照が1日4時間未満で、光熱費なども増加していること、移転によるしか被害を回避する方法がないこと、住居の位置が住宅地域にあることなどの事情からみますと、その日照妨害は社会通念上の受忍の範囲をこえいるものと考えられます。
また、補償金の80万円も特に高額とはいえませんので、あなたが受け取った補償金は、その名称はどうあれ、心身に加えられた損害について支払いを受けた慰謝料等に類するものとして、おおむね非課税の取り扱いが受けられるものと思われます。