事例で検討
私は千葉県に住んでおり東京に事務所を構え個人事業を始めました。
この場合、住所地と事業所の所在地の所轄税務署が違うのですが、これから申告等は事業所のある所轄税務署でよいのでしょうか?また、税務署への手続き等はどうしたらよいのでしょうか?
アドバイス
事業所の方を納税地とすることができます。ただし、両方の所轄税務署長に一定の届出をしなければなりませんので注意してください。
所得税の申告や納税は、
どこでするの?
所得税の申告や納税は、納税者の納税地を所轄する税務署ですることになっています。
この場合の納税地ですが、具体的には、納税者が申告・申請・届出・納税などをするときの基準になる場所、または税務署が更正、決定、却下などの処分をする場合の所轄を定める基準になる場所のことをいいます。
国内に住所や居所がある
納税者の納税地はどこになるの?
次の場合に応じて、それぞれ次の場所になるとされています。
(1) 国内に住所がある場合
・その住所地
※ただし、国内に住所のほかに居所もある場合は、住所地の代わりに居所地を納税地にすることもできます。
(2) 国内に住所がなく、居所がある場合
・その居所地
(3) 国内に住所や居所があって、かつ、それ以外の場所に事業場などがある場合
・住所地や居所地に代わりに、事業場などを納税地とすることができます。
ご質問の場合は、(3)の場合になりますので、事業所の所在地を納税地にすることができることになります。
この場合の税務署への手続きは
どうしたらいいの?
納税地とされている住所地や居所地の所轄税務署長と、事業場等の所在地の所轄税務署長の両方に、住所や居所地と事業場等の所在地、事業場等の所在地を納税地とすることを便宜とする事情などを記載した届出書等を提出しなければならないことになっています。
両方に提出しなくてはならないのは少し面倒ですが、忘れずにしてくださいね。
※居所というのは、生活の本拠ではないけれど人がある期間継続して居住する場所のことです。
住所地と居所地、所在地の違いは?
確定申告は事業所で?
納税地と言ったら通常は住所地となりますので、国内に住所のある人は、その住所地が納税地となります。この場合の住所とは、生活の本拠地のことですが、これは客観的な事実によって判断されます。
また、国内に住所がなく居所がある人の場合は、その居所地が納税地となります。この場合の居所地とは、相当の間継続的に居住しているけれど、その場所との結びつきは住所と言えるほどのものではない場所のことです。
つまり、その人の生活拠点とまでは言えない場所ということです。
さらに、納税地の特例として、国内に住所以外に居所のある人は、住所地の代わりに居所地を納税地にすることも可能です。
国内に住所や居所のどちらかがあって、しかも事業所などもあれば、住所地の代わりに事業所などを納税地とすることもできるわけです。
理論的には、所得ごとに別々の納税地に確定申告することも可能のように見えますが、仮に行った場合には、おそらく税務署から実体を確認するためのお尋ねがきて、どちらかに統一して確定申告するよう指導があると思います。
なお、開業届の際には、一般的には住所地を記入するのですが、自宅と事業所が異なるケースでは、事務所所在地で納税することもできます。
この辺りのところは、税務署に行って相談すると丁寧に教えてもらえます。
居所地や事務所等の所在地を
納税地にできるの?
納税地は、確定申告の際に自由に選べるわけではありません。
もし居所地や事務所等の所在地を納税地に変更する場合には、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出」を提出する必要があります。