特別受益と持戻し免除|代襲相続との関係は?

 

 

特別受益持戻し免除

代襲相続との関係は?

 

 

今回は、特別受益と持戻し免除についてのお話です。

 

特別受益というのは特別な受益ということですが、遺産分割にあたって、遺産分割の前に、あるいは遺産分割とは別に財産をもらっているという人がいる場合、そのことを考慮して遺産分割をしなければいけないということです。

 

例えば、遺言書で別に財産の遺贈を受けている、あるいは生前に家を建てるのにお金を出してもらった、などといった場合です。

 

こうした場合に、そのことを考慮しないと、ある相続人だけたくさんもらえるということになって非常に不公平だということが、この特別受益という制度の一つの理由になっています。

 

よくあるのは、生計の資本としての贈与ということです。生前に家を建てるのにお金をもらった、あるいは学費ということでお金をもらっているといった場合です。

 

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しかしながら、お金をもらっている、利益を得たという場合、すべて特別受益になるというわけではありません。

 

例えば、先ほどの学費という点についても、それぞれの相続人が同じように学費を出してもらっているという場合には、特別受益ではないということで、特に遺産分割の際に考慮する必要はないという判断がされることもあります。

 

 

持戻し免除とは?

 

もう1つ「持戻しの免除」といった規定があります。すなわち亡くなっていった被相続人が、この点については特に遺産分割にあたって考慮する必要はないということを表明している場合、その意思を尊重するということで特別受益に入れないということも考えられます。

 

また、はっきりとした表明がなくても、持戻しが暗黙のうちに「被相続人はそういった気持ちを持っていた」ということで、黙示の持戻し免除というものが認められることがあります。

 

例えば、無償で土地を提供してその上に家を建てることを認めたといった場合でも、その家に一緒に同居していた場合には、特に無償で使用させたということについて特別受益とはしないといった考え方があります。

 

このように、特別受益というのは単純ではない部分があります。特に遺産分割手続きになりますと、相手が特別受益をもらっているということで様々な主張がなされます。これが遺産分割を複雑にする1つの要因と言われています。

 

しかしながら、特別受益というのは単に主張すればいいというわけではありません。

 

なぜなら、それをきちんと証拠によって立証しなければいけないからです。「相手がいくらもらっている」というだけ、「そのはずだ」というだけではなくて、具体的な証拠を出さなければなりません。

 

実際には亡くなっていった親と相手のことですから、証拠というのが難しいことがあります。ですから、特別受益を主張しようというときは、それが法律的に通るかどうかということをきちんと弁護士なり専門家に相談して主張するということが重要です。

 

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特別受益と代襲相続の考え方は?

 

続いて、特別受益と代襲相続の関係についてのお話です。

 

特別受益というのは相続に関する問題で、死亡する前に被相続人(亡くなった人)が、例えば「生計の資本としての贈与」などをしているというような場合に、その相続人は相続の前渡しを受けたということで、相続のときにその分を「持戻し」といって、もうすでにもらったものと考えるということです。

 

そのことによって、死亡時に持っていた相続財産についてその分取り分が減る、先に前倒ししてもらってしまっているので取り分が減るという制度になっています。

 

一方、代襲相続というのは、相続人が死亡したときに、例えば子供がいるというときには、その子供が代わって相続人に入ってくるというような制度です。

 

 

子供に生前贈与がされていた場合は?

 

今回のケースで設定として考えるのは、お父さんが亡くなって、本来は相続人は子供2人だったものの、その子供のうちの1人Aさんは先に亡くなってしまっていて、その子供(孫C)がそこに代わって入る、代襲相続をするというときに特別受益の問題がどうなるのかという話になります。

 

例えば、このお父さんが生計の資本として1,000万円を贈与していたというときに、その1,000万円を特別受益だとして、相続の前渡しとして考えなければならないのかという問題があります。

 

この1,000万円が子供Aに対して贈与されていたというような場合に、どのような取扱いをされるのかというのがまず1つあります。子供Aさんはすでに亡くなっていて、特別受益が問題になる相続が発生したときにはすでにいないということになります。

 

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このように、すでにいないという人が生前に贈与を受けていたときに、どのような判断がされるのかというと・・・

 

基本的に実務としては、これは「持戻し」といって、相続の前渡しとなるということで、孫Cさんが入ってきたとしても、その1,000万円分はもらったものとして取り扱われることになります。

 

 

孫に生前贈与されていた場合は?

 

次に、この生前の1,000万円の贈与が子供Aさんに対してでなく、代襲相続人である孫Cさんにされていたという場合にどのような取り扱いがされるのかというのが問題になることがあります。

 

このような生前贈与が子供Aさんの死後、つまりAさんが亡くなっていて、そこに代襲相続人として入るということが決まった後に贈与を受けていたというときには、これは争いがなく持戻し、つまり孫Cさんが受けた1,000万円についても相続の前渡しとして考えるということになっています。

 

一方、子供Aさんの生前、つまり、まだ相続人としては子供Aさんの方が生きていたというときに、孫Cさんが1,000万円の生前贈与をされた場合にはどうするのかということがあります。

 

つまり、孫Cさんが贈与を受けたときにはまだ相続人ではなかった、その後に代襲相続人という立場になったという場合です。

 

これについては、どのような判断をするのかということについては審判例も分かれていて明確な結論が出ていません。

 

内容によっては、孫Cさんがすでにもらっているということで、AさんとCさんの系列ではすでに生前贈与を受けていたのだから、同じように持戻しをすべきだという考え方もあります。

 

逆に、孫Cさんがもらったときには、本来はAさんが相続人となるはずだったのだから、相続の前渡しとは違うということで、持戻しはしないという判断もあります。

 

このような分かれた判断になりますので、Aさんの生前というタイミングで生前贈与を孫が受けたというときには、争い方によっては結論が分かれることになります。

 

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