相続の遺留分とは?
割合と減殺請求の期限は?
今回は、遺留分についてのお話です。遺留分というのは、相続の遺言に関する制度です。例えば、夫と妻、子供の3人家族がいて、夫が亡くなったケースです。財産は6,000万円とします。
この場合、法定相続分ですと、妻は半分の3,000万円、子供も半分の3,000万円、半分ずつ分けます。
このケースで夫が妻に「私の財産をすべて妻に相続させます」という遺言書を書いていたとします。遺言書があると遺言書のとおり、この6,000万円はすべて妻が相続することになります。
ですが、子供としては「3,000万円の相続分があるのに1銭ももらえないなんてつらい」ということになります。もちろん、仲が良ければいいのですが、中には「これじゃ納得いかない」ということもあります。その場合、子供(妻もそうですが)は遺留分を持っています。
遺留分の割合はどれくらい?
この遺留分は法定相続分の1/2です。ですから、子供は1,500万円の遺留分を持っているわけです。この遺留分を持っている人は、贈与を受けた母親に対して「遺留分だけ返してほしい」と言うことができます。これを遺留分減殺請求と言います。
実務上は内容証明郵便で送って通知をしておきます。この遺留分減殺請求をすると、この遺留分1,500万円を取り戻すことができます。遺留分というのはこういった制度になります。
ちなみに、子供としては「自分は要らないよ」という選択もできます。ですから、自分で考えて「やっぱり遺留分を欲しい」という場合は、遺留分減殺請求をして返してもらいましょう。このように、遺留分というのは後から返してもらうということになるのですね。
遺留分減殺請求の期限は?
この遺留分減殺請求には期限があります。遺留分が侵害されている、遺留分に足りないということを知った時、基本はお父さんが亡くなった時ですね、そこから1年間以内に交渉しないと遺留分を行使することができなくなります。
ですから、前述のとおり、内容証明郵便でしっかり1年以内に請求したというのが証明できるようにしておく必要があります。
なお、遺留分が侵害されていることを知らなくても、お父さんが亡くなってから10年間、遺留分減殺請求権を行使しないと同様に時効になってしまいます。
親の遺留分の割合は?
今度は亡くなった夫の両親が相続人であるというケースです。夫が若くして亡くなったような場合です。このような場合「妻にすべての財産を相続させる」という遺言書を残したとしても、この場合も親にも法定相続分がありますし、遺留分もあります。
ただし、遺留分の割合は違います。まず妻の法定相続分は2/3、両親は1/3です。両親は2人で合計して1/3です。そして、この遺留分はまた1/3なのです。
ですから、両親の遺留分は1/3×1/3=1/9、これは2人分ですから1人分は1/18、1/18ずつ分けることになります。
兄弟姉妹にも遺留分はあるの?
続いて、兄弟姉妹、子供のいない夫婦の場合です。夫が亡くなった後、夫の兄や弟はいるけれど、子供はおらず、両親もいないケースです。この場合は、兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹の法定相続分は1/4です。
この場合、遺言書を書いておけば兄弟姉妹には遺留分はありませんから、一切遺留分減殺請求をされる心配はありません。すべて妻が相続することができます。このように、お子さんのいないご夫婦のケースでは、お互いに遺言書を書いておくということが大切です。
遺留分の基礎となる財産の計算方法は?
続いて、生前贈与と遺留分についてのお話です。遺留分の基礎となる財産、遺産のようなものですが、それをいくらと評価するに当たっては、生前贈与を一定の範囲内で考慮することができます。
この生前贈与をどの範囲で考慮するかというのは、非常に色々難しい見解が分かれています。
例えば、いわゆる特別受益に当たるようなものを考慮して遺留分の計算をしてよいかということに関しては、裁判所は、「原則として特別受益に当たるようなものは考慮した上で遺留分を計算してよい」と言っています。
また、亡くなる1年以内にされた贈与であったり、相続人で財産を取得する人と亡くなる人双方が遺留分を害するということを知った上でした贈与、そのようなものは遺留分の基礎となる財産に含めると言われています。
この生前贈与は、何でも遺留分の基礎となる財産に含むわけではないので、重要なポイントは、どこを重視して調査して証明して自らの権利を主張していくかということになります。
そのポイントをずらしてしまうと、全く意味のないことを一生懸命調べているということにもなりかねませんので、特に注意が必要です。