遺産分割協議は法定相続分どおりにしないといけないの?
今回は、相続が実際に発生した後に財産を分けるとき、法定相続分どおりに分けないといけないのかどうかというお話です。まず法定相続分というのは、最近色々な相続のセミナーや本などにもたくさん出ているので、あなたも聞いたことがあるかもしれません。
例えば、相続人が奥さんと子供が2人であれば、奥さんの法定相続分は1/2、子供は子供全体で残りの1/2なので、残り1/4と1/4となります。
このようなことが“法定相続分”ということで、民法という相続の規定が書いてある法律で決められています。そういった分け方、1/2とか1/4とか、色々なケースでそういったことが決まっているのです。
では、実際の相続のときにそのとおりに分けなければいけないのでしょうか?
例えば、全部が現金であれば1/2とか1/4とか、単純にその金額を割り算すればいいので、わかりやすいです。
だいたい現金だけという人よりは、預金や定期預金があったり、株式があったり、自宅の土地や建物があったり、単純に金額で真っ二つに割れないようなものの方が実際の財産としては多いです。
そういったこともありますし、また「特に自分はいらないんだけどな」というケースもあります。
そういった相談でよく聞かれるのは、「1/2でないように分けたら、何か法律上問題があるのですか?」というものです。贈与になるのではないかとか、税金がたくさんかかってくるのではないかとか、そういった心配をされる方もいます。
ただこれに関しては、財産の分け方をどういうふうにするのかというのは自由です。つまり、法定相続分というのがあっても、まず話し合いでどういうふうに分けるのかを決める段階では、相続人の自由に分け方を決めることができます。
例えば、先ほどの事例、お父さんが亡くなって、相続人がお母さんと子供2人という場合です。このケースでは、法定相続分は奥さんが1/2、子供2人がそれぞれ1/4ずつという形になります。
ですが、例えば、相続人全員が納得して、「今回は長男に全部渡せばいいんじゃないの」とまとまることもあると思います。もちろん、長男ではなくて次男に全部でも構いませんし、「お母さんは特に何もいらないので兄弟で分けてくれ」といったことも結構あると思います。
こうしたことが法律的に何か問題があるかといえば、当然これは問題ないです。
つまり、法定相続分というのは、あくまでも「その分まで権利を主張することができますよ」というイメージです。その上で、例えば先ほどの事例でしたら、お母さんが「自分はいらないから」と言ったら何か問題があるかといえば、そういうことはありません。
遺産分割協議書とは?
相続が発生したときに遺言書がない場合というのは、遺産分割協議書といって、誰がどの財産をもらうのかというのを書いて、相続人全員がそれを納得していますという意味で、署名をして実印を押さなければなりません。
その遺産分割協議書を持って、例えば銀行の手続きや不動産の名義変更で使います。要するに、遺産分割協議書という書類によって、みんなが納得しているのかどうかがわかるのです。
特に全員が「お兄さんに全部でいいよ」とか「お母さんはいらないよ」とか、そういったことで納得しているのであれば、絶対にお母さんに1/2渡さなければいけないとか、長男は絶対に1/4もらわないといけないとか、そういう話ではないのです。
これはいらないという人の分については、いらないということで特に問題はありません。
一方、例えばもめていて、長男が「自分が全部ほしい」と主張した場合に、お母さんや次男はそれぞれ1/2、1/4の取り分がありますので、「全部もらうというのは認められないよ」ということで、極端な話、裁判などになれば、法定相続分をもとにどうしてもその話し合いがされることになるのですが、“みんなが納得している分にはどういう分け方でもいい”というのが結論になります。
ただし、この場合には一つ注意が必要です..
というのは、相続税が関係してくる人に関しては、特に配偶者、奥さんや旦那さんが相続人になる場合は、その法定相続分までは相続税がかかりませんというような特例があるからです。
分け方だけの話しで言うと、特に誰がどういうふうにもらっても、相続人全員が納得してさえいるのであれば、法定相続分どおりでなくてもどういうふうでも構いません。
一方で税金の話、相続税の申告のある人、おおむね相続を受ける人の4〜6%の人が相続税がかかると言われていますが、そういった人は税理士に相談されることをおすすめします。
例えば長男が全部もらったら、今回の相続の税金もそうですし、次の相続もそうですね、どんどん代替わりしていきますから、次の相続の時に税金が高くなってしまったりしないかどうか、そういった相談は税理士にされた方がいいです。
とにかく法定相続分というのは、民法上分け方を考える際には、特に絶対にそれで分けなければいけないという話ではありません。
どちらかというと、分け方を考えるときには、もめたときの目安、つまり、「最大限自分はどこまで欲しいと主張できるのか」という目安と考えていただけるとよいと思います。