遺言書が必要な人は?後継ぎ・相続人がいない、相続人の仲が悪い場合

 

 

遺言書必要な人は?

後継ぎ相続人がいない、相続人の仲が悪い場合...

 

 

今回は、「特定の相続人に多く財産を渡したい場合にも遺言書が必要になる」というお話です。

 

あなた自身の相続が発生したことにより相続人となる人の中には、家業を引き継ぐ後継ぎがいたり、障害を抱えている人がいたり、体が脆弱で収入が少ない人がいたり、色々な理由によって他の相続人よりもできれば財産を多く相続させたいと考えているケースもあると思います。

 

とはいえ、何も対策することなく相続が発生してしまえば、すべての相続人が法定相続分に応じた相続分を相続することになってしまいます。

 

つまり、財産を多く相続させたいと考えていても、実際に行動に移さなければ何の意味もないのです。

 

仮に被相続人予定者が財産を多く渡したい相続人に直接「あなたには財産を多く相続させるから安心しなさい」と伝えていたとしても、何ら対策を取らずに口約束だけでは何の意味もないのですね。

 

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実際に相続が発生してその相続人が共同相続人に対して、「被相続人は私には多めに相続させると言っていた!」と伝えたとしても、それは「自分がたくさんもらいたいだけだろ!」と思われてしまう可能性が高いです。

 

このようなことにならないためには、法定相続分以外の分割方法を指定しておくことが大切です。それにはやはり遺言書を必ず残しておくことが有効です。

 

その際には、財産の分け方についてだけを淡々を記載するのではなく、なぜそのような財産の相続方法にしたのか、なぜ相続分に差があるのか、そういった相続人全員が納得できるような説明をすることが重要です。

 

そして、相続人一人にひとり向けたメッセージをしっかり記しておくことも忘れないようにしましょう。

 

遺言書というものは、遺産の分け方を淡々と記載していくものではありません。相続人に向けた最後の手紙であるということを常に念頭に置いて書くようにしてください。

 

 

相続人がいない人は遺言書が必用?

 

続いて、相続人がいない人も遺言書があったほうがよいというお話です。

 

相続人がいない人というのは、配偶者や子供、両親、兄弟姉妹がいない人のことです。亡くなった方に相続人となる人が一人もいない場合には、被相続人の財産はすべて国のものとなってしまいます。

 

自分の全財産が国のものになっても構わないと考えている人でしたら何の問題もありません。

 

ですが、例えば、日頃から何かと気にかけてくれていた近所の方や、何年も通ってお世話になった介護施設、あるいは慈善活動をしている団体など、こうした相続権のない人に財産を渡したいというケースもあるわけです。

 

もちろんそういった相続権が全くない第三者に自分の財産を寄付することは可能です。ただその場合には遺言書が必用になりますので、生前にきちんと準備しておくことが大切です。

 

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なお、相続人がいないということは、自分の死後に必要となる手続きを誰かに依頼する必要もあります。一般的に相続人がいない人が亡くなった場合には、利害関係者が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てます。

 

この相続財産管理人は、自分自身が遺言書で指定することも可能ですから、専門家にその旨を相談して、相続手続きを代行してもらうように手配しておかれることをおすすめします。そうしておけば、相続発生後、必要となる手続きを滞りなく進めることができます。

 

 

相続人同士の仲が悪い場合も遺言書は必須です!

 

相続が発生し遺言書がなければ、相続人全員で“誰がどの財産を相続するのか”を決める遺産分割協議をしなければなりません。

 

相続人同士の仲が良くても、この遺産分割協議がまとまらずにトラブルに発展し、これをきっかけとして疎遠になるケースも少なくありません。ですから、現時点で仲が悪いのでしたら、遺産分割協議が裁判にまで発展する可能性もあります。

 

相続人同士の仲が悪い場合に最もやってはいけないことは、“相続分に大きな差を出すこと”に他なりません。仲が良くても悪くても、仮に自分の相続分が他の相続人の半分しかないことがわかったら、それはトラブルの原因になってしまうでしょう。

 

なので、もしどうしても相続分に差をつけたいのであれば、生前の自分が元気なうちに、その趣旨を相続人全員に話して、納得いくまで相続人と話し合うことが大切です。また、それを遺言書に書いておくことも重要です。

 

一方、相続財産のうち、不動産の占める割合が多い場合、それを均等に相続させることは非常に難しくなります。

 

「その不動産を売却してお金にして均等にもらおう」と相続人全員で話し合いがまとまれば、それも可能になるかもしれません。ですが、そうなるとは限らないのです。

 

ですから、不動産を相続する相続人以外には生命保険を多めにかけておくなど、分けやすい財産を残しておくことをおすすめします。

 

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長男の嫁に遺産相続させたい場合も遺言書の準備を!

 

相続人となるあなたの子供の配偶者(嫁や夫)に財産を渡したいという場合も遺言書の準備をしておきましょう。

 

よくあるケースとしては、息子の嫁に財産を渡したいというものです。例えば、あなたがが病気になったことから長男夫婦と同居を始めて、長男の嫁が嫌な顔一つせずに身の回りの世話をしてくれたようなケースです。

 

ただ、長男の嫁がどれほど献身的な介護をしてくれたといっても、長男の嫁には相続権は発生しません。

 

なので、長男の嫁に相続させたいのであれば、遺言書を残すしか方法はありません。どうしても長男の嫁に財産を渡したいのであれば、きちんと遺言書を準備しておく必要があります。

 

しかしながら、遺言書を準備したのはいいけれど、相続が発生し相続人が遺言書を見て初めて長男の嫁に相続させたいという意思を知ったとなると、他の相続人から「どうせ財産目当てだろう」と言われてしまい、かえってトラブルの要因になる可能性もあります。

 

ですから、そのようなことにならないように、ご自身が元気なうちに「長男の嫁に財産を渡したい」という意思があることを相続人全員にきちんと伝えておくことが大切です。

 

ちなみに、長男の嫁と養子縁組をするという方法も財産を相続させるためには有効な手段と言えます。ただし、この方法も前述のとおり、相続人全員に理解してもらったうえで養子縁組の手続きを行うことが大切です。

 

遺言書を準備したり養子縁組をしたり、良かれと思って講じた対策がかえってトラブルの原因にならないように注意してください。

 

 

認知のない子供に遺産相続させたい場合も遺言書の準備を!

 

認知をしていない子供に財産を渡したい場合も遺言書の準備をしておきましょう。これは、父親からの認知のない子供には一切相続権が発生しないからです。

 

ただ認知というのは遺言によってもできます。

 

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具体的には、遺言書に「○○を認知する」を記載して、必ず遺言執行者を指定しておきます。この遺言執行者に認知の手続きをしてもらうことによって認知のある子供になり、相続権が発生することになります。

 

実際、家族には隠し子がいることを言い出せなくて、死後認知をする人も少なくありません。それにより、死後相続人が愛人や隠し子がいることを知ってトラブルに発展することもあります。

 

なぜなら、死後認知をした子供と戸籍上の夫婦間に生まれた子供には同等の相続権が発生するからです。見たことも聞いたこともない相続人が突然登場するわけですから、相続手続きも非常に面倒になってきます。

 

 

離婚協議中の配偶者に財産を渡したくない場合は遺言書の準備を!

 

離婚協議中の妻あるいは夫に遺産を相続させたくない場合も遺言書を準備しておきたいです。

 

たとえ離婚協議中であっても、それに決着がついていないのであれば、夫婦であることには変わりありません。そうすると、当然あなたが亡くなった時には配偶者に相続権が発生します。

 

戸籍上の夫婦である以上、相続権は当然に発生するからです。

 

ですから、このようなケースに該当する場合には、「配偶者には相続させたくない」といった趣旨の遺言書を準備しておくことをおすすめします。

 

ただし、仮に遺言書に「配偶者には財産を一切相続させない」と書き記したとしても、配偶者には遺留分が認められます。つまり、配偶者が遺留分の放棄あるいは相続放棄をしなければ、遺留分相当額を相続させる必要があるのです。

 

この遺留分の放棄や相続放棄については、配偶者が自らの意思で手続きを行わなければなりません。こればっかりは相続が発生してみなければわからないというのが現実です。

 

それから、婚姻期間中に「配偶者に全財産を相続させる」といった内容の遺言書を準備している場合には、破棄あるいは新たに書き直したほうがよいです。

 

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どのようなタイプの遺言書でも日付の新しいものが優先されます。つまり、新たに遺言書を書いたら以前書いた遺言書の効力は消滅するということです。

 

ちなみに、離婚後の遺言書の効力については色々な見解がありますので一概には言えません。

 

ただ離婚が成立したとはいえ、遺言書がそのままになっていれば、元配偶者に対して“遺贈する”という解釈で財産をもらう権利があるとみなされる可能性があります。

 

離婚後再婚すると、再婚相手には当然に相続権が発生します。つまり、新たに遺言書を作成せず破棄もしていなければ、元配偶者が「財産をもらう権利がある!」と遺産分割協議に参加するといった状態もあり得るのです。

 

このようなトラブルを回避するためにも、離婚前に準備していた遺言書は破棄するか、あるいは書き直しておくようにしましょう。

 

以上は、あくまでも籍を入れている夫婦のケースです。

 

事実婚状態の夫婦には相続権が一切発生しませんので、夫婦関係を解消したいといった話がまとまらずに困っているとしても、相続に直接影響することはありません(遺言書を残している場合は除きます)。

 

子供がいる場合の相続権は?

 

事実婚状態の夫婦の間に生まれた夫からの認知を受けた子(非嫡出子)、あるいは戸籍上の夫婦の間に生まれた子(嫡出子)、がいる場合は、たとえ親が離婚したとしてもその子供には相続権が発生します。

 

つまり、親権が妻に渡りそうな状況で離婚協議中の場合、ご自身の相続が発生すると、妻と子供の双方が全財産を相続することになります。

 

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内縁関係の夫婦は遺言書の準備を!

 

内縁関係の妻あるいは夫に財産を渡したいという場合も遺言書を準備しておきたいです。これは、たとえ何十年と連れ添った間柄であっても、籍を入れていなければ相続権は一切発生しないからです。

 

入籍していない夫婦(内縁関係の夫婦)から生まれた子供は、夫からの認知を受けていれば入籍している夫婦から生まれた子供と同等の相続権が発生します。

 

つまり、相続権の第一順位者は子供なので、子供が相続人となれば他に相続人となる人は出てきません。

 

ところが、子供のいない内縁関係の夫婦の場合には、亡くなった人の親あるいは兄弟姉妹、兄弟姉妹がいない場合には甥や姪が相続人となります。

 

つまり、たとえ夫婦で何十年も住んでいた自宅であっても、その家を相続する権利があるのは妻や夫ではなく、親あるいは兄弟姉妹(甥・姪)となってしまうのです。

 

ですから、相続が発生して被相続人の相続人である親や兄弟姉妹から「家を売ってお金にしたいから出て行って」と言われてしまうと、それに応じるしかありません。

 

ということで、内縁関係の夫婦に相続が発生し、残された妻あるいは夫に財産を残したい場合には、遺言書を残しておくしか方法はありません。

 

相続人が兄弟姉妹(代襲相続の場合は甥・姪)といった場合には、遺言書に「妻あるいは夫に全財産を相続させる」と書いておけば問題ありません。なぜなら、兄弟姉妹には遺留分がないからです。

 

ただ場合によっては、被相続人の親が相続人となるケースもあります。

 

親が相続人となる場合には、法定相続分の1/3が遺留分として認められていますので、全財産を妻あるいは夫に残すことは不可能です。なので、この遺留分を侵害しない程度の相続方法を考える必要が出てきます。

 

ちなみに、法定相続人となる人が誰もいないケースの場合、残された妻あるいは夫が“特別縁故者”として申請すると相続権を得ることができます。

 

ですが、これは手続きが非常に面倒ですから、やはり内縁関係の夫婦の場合には遺言書を残しておくことをおススメします。

 

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