自筆証書遺言が有効なケースと
遺言書の作り方!
遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
これまでは、「公正証書遺言がおすすめですよ、自筆証書遺言はせっかく書いても手続きに使えないことがありますよ、無効になってしまうことがありますよ」というお話をしてきました。
また、専門家のところに相談に行っても、おそらくすべての人が公正証書遺言を勧めるはずです。
ですが、「こういう場合には自筆証書遺言を作成して下さい」「自筆証書遺言でもやむを得ませんね」というケースがないわけではありません。今回は、そんな自筆証書遺言の方が有効なケースについてのお話です。
自筆証書遺言が有効なケースとは?
まず1つ目は、どうしてもお金がないというケースです。
公正証書遺言を作成するにはお金がかかります。公証人にお願いしますから公証人の報酬、手続きを専門家に依頼すればその報酬もかかります。財産の評価額によっても違いますが、最低でも10万円程度はかかってきます。
そういったお金が今はどうしても用意できない、あるいはそういったお金は絶対に払いたくないという場合に、公正証書遺言は作れない、それなら遺言書は作らない、ということになるくらいなら自筆証書遺言を書いて下さい。
2つ目は、公正証書遺言を作成していることを
家族に知られたくないケースです..
遺言を作っていることを絶対に知られたくないケースというのはよくあります。例えば、自分の財産をめぐって子供たちが、お互いをけん制し合ったり監視し合っている、疑い合っているというケースです。
そういう場合、公正証書遺言ですと、書類を取り寄せたり、専門家が自宅に訪問したり、公証人に来てもらったり、公証役場に行ったり、そういう動きが出てきます。そうすると、「お父さん、遺言を作ろうとしてる、どういう遺言なんだろう」とわかってしまいます。
それを知られたくないということはあると思います。そういった場合には、やむを得ませんから自筆証書遺言を自宅で書くという方法を選択せざるを得ません。
3つ目は、死期が迫っているケースです..
医者からもう明日かもしれない、一週間後かもしれないと言われてしまったケースです。
その時に「自分はまだ遺言を作成していない、公正証書遺言を準備しよう」と思っても、公正証書遺言というのは、書類を取り寄せたり、公証人の予定を入れたり、そういうこともあってしばらく先になります。
その間に亡くなってしまったらもう遺言はないという状態になってしまいます。
それなら、まず自筆証書遺言を書いて、その後で公正証書遺言をきちんと作成できたら自筆証書遺言の方は破棄する、という方法がベターです。
私の経験上も、「公正証書遺言ができるまで、仮に自筆証書遺言を作っておきましょう」ということで作って、その間に亡くなってしまって、結果的に自筆証書遺言で手続きをしたというケースが何度かありました。
そういう場合には、自筆証書遺言を作成するのがおすすめです。
自筆証書遺言の作り方は?
自筆証書遺言の要件というのは、比較的簡単です。
まず全文を自分自身の手で書くことです。よく、物件目録などそういったものだけはパソコンで作って本文を自分の手で書く、あるいは、パソコンでかなり作り込んで名前だけを自書する、という人がいます。これはダメです。すべて手書きで書いて下さい。
次に、日付を入れることです。遺言書というのは何度も書き換えができますから、最後に作ったものがどれなのかということを、比較する必要があります。ですから、「○月吉日」というのはダメです。正確な日付を入れて下さい。
最後に、名前の横に印鑑を押すことです。
以上が自筆証書遺言の要件になります。ちなみに、自筆証書遺言を書く筆記用具についてですが、鉛筆でももちろん構いません。ただ、後で消されたり消えたりしないためにはボールペンがおすすめです。また、破れたりしないような丈夫な紙に書いて下さい。
そして、できれば中が見えないように、封筒に入れて封印をしていただければ完璧です。なお、封筒に入っていなくても、遺言書の効力はもちろん有効です。
自筆証書遺言の具体的な作り方は?
まずは財産のリストアップです。具体的には、不動産、預貯金、有価証券、価値のある骨董品(刀・絵・壺など)、宝石類などです。
あと重要なのは借金です。マイマスの財産も相続されるからです。保証債務など、自分はどういうものを持っているのか、そいういったものをまずは整理して下さい。
その上で、それを誰に譲りたいのか、息子さん、娘さん、お孫さん、あるいは、お世話になった施設や法人、そういったところをまずは考えます。ここでは、その譲る相手が相続人なのか、相続人でないのか、ということを意識して下さい。
というのは、相続人であれば「相続」、それ以外の人であれば「遺贈」ということになるからです。
遺言書の書き方は?
そして、いよいよ遺言書を書いていくわけですが、不動産に関しては、とにかく正確に書いて下さい。
登記簿を見ながら、土地であれば地番、建物であれば所在と家屋番号を書いていきます。もし登記簿謄本が手に入らなければ、権利証や固定資産税の納税通知書などの公的書類を見ながら正確に書いていって下さい。
預貯金についても、通帳を見ながら、銀行名、支店名、口座番号などを正確に書いていきます。
例えば、通帳がたくさんあって、全部書くのは書き入れないという場合には、「長男に半分、次男に半分」というように割合で書いても構いません。そういった書き方でも手続きをすることができます。
自筆証書遺言の保存方法は?
完成した遺言書は、見つかるように保存して下さい。見つからなければ、遺言書を作った意味がありませんよね。ですから、大事なものが置いてあると家族みんなが知っている場所に保存して下さい。
あるいは信頼できる人に託すことです。近所の人や親戚の人、もしくは専門家などでも構いません。遺言書が見つかったら、その後手続きをしていくことになります。