相続税で配偶者控除と基礎控除の併用は?
今回は、相続税の基本的な考え方である基礎控除についてのお話です。前回は、配偶者控除を安易に使うと実は落とし穴があるというお話でした。
この配偶者控除というのは、父が亡くなれば母、母が亡くなれば父ということになりますが、税の仕組みからすると、配偶者に財産を移動させるのは比較的簡単です。要するに、相続税がかかりにくいというシステムになっているのです。
ただそれを使ってしまうことによって、その次の世代、子の世代に財産を移すときにきっちり課税されてしまうという側面もあります。なので、配偶者控除を使う際には注意が必要になるのです。
例えば、父が亡くなったときに、配偶者控除を使っては母に財産を移すよりは、普通に父の財産を子世代に移して、母の方に移す財産のは極力少なくする、という形をとった方が財産を子世代に移動していくという意味では合理的です。
ただそこで立ちはだかってくるのが相続税の課税問題です。配偶者控除を使わないと考える場合には、相続税の課税という問題を考えていかなければなりません。
配偶者控除を使った場合は、いわゆる課税を先送りすることができるのですが、次の世代には必ず課税されてしまいます。なので、そこをどのようにバランスを取っていくのかということを考えていかなくてはなりません。
つまり、親の財産を子供に移動することに重点を置いた場合に検討しなければならないのは、やはり相続税の課税の免税点というところになるわけです。
相続税の課税の免税点は?
今のところ、相続税の課税の免税点というのは、基礎控除という控除がありますので「5,000万円+(相続人の数×1,000万円)※」、これが基礎控除の現段階での公式となります。
ただこの基礎控除は徐々に見直されていくのがほぼ確定していますので、今から相続対策を考える場合は、この基礎控除が少なくなる方向で計画を立てていかないとなかなか上手くいかないということになります。
※相続税の改正により、平成27年1月1日以後は「3,000万円+(相続人の数×600万円)」になりました。
今後の相続対策は?
これから相続対策を考える上では、「3,000万円+(相続人の数×600万円)」を念頭におくことが大切です。
配偶者控除を極力使わずに財産を子世代に移していくということになりますと、基礎控除の範囲の中に相続財産を押し込めてしまえば課税はされないということになります。
ですから、基礎控除「3,000万円+(相続人の数×600万円)」を基準にまずは免税ポイントを考えていく必要があります。
例えば、4人家族であれば、父が亡くなった場合は、母、子供2人で相続人は3人となりますから、基礎控除は4,800万円(3,000万円+3人×600万円)となります。
つまり、相続財産を全部合わせて引くものを引いて、残りが4,800万円以内であれば相続税はかからないということになりますので、どういう移し方をしても構いません。ただし、基礎控除の金額を超えてしまう場合は対策を考えていかなくてはなりません。
ということで、ここでは配偶者控除を極力使わないという方向を考えた場合に、何を拠り所にしたらよいのかというお話でした。
相続税の控除のまとめ!
続いて、主な相続税の控除をまとめてみたいと思います。控除というのは、その部分は税金がかからない、免税されている部分になります。
これまでお話してきましたが、相続税を計算する上で大きな控除としては、1つには基礎控除、もう1つは配偶者控除がありました。
基礎控除というのは、相続人の人数によって非課税となっている部分、認められているものが、誰でも平等に認められている部分があります。基礎的な控除という意味で基礎控除という名称が付けられています。
具体的には、現行税法ですと3,000万円というのはすべての人に認められている数値であって、その他に相続人の数1人当たり600万円ということになっています。ですから、今のところは3人が相続人であれば3,000万円+600万円×3人で4,800万円となります。
一方、配偶者控除というのは、パートナーですね、夫であれば妻、妻であれば夫、このパートナーが相続する場合には、いわゆる税金を非課税ということではなくて、繰り延べますという考え方になります。
基礎控除については「この部分には課税しません」ということなので完全に非課税です。つまり、基礎控除を使うことによって課税は将来に渡っても課税されることはないということです。
ですが、配偶者控除というのは、夫が持っていた財産を妻に移動するのであれば、その相続に対して税金はかけませんということが決まっているだけであって、配偶者から子世代に財産が移る時にはきっちり課税されます。
なので、配偶者控除は課税の先送り、猶予という考え方で使っていく必要があります。
その他、借金があればそれを相殺するというような手法もありますが、すべての人が使える控除としてはこの2つの控除があります。
この配偶者控除を使うのか、配偶者控除を使わずに基礎控除を使っていくのか、そのバランスについては次の相続をしっかり考えたうえで行うことが大切です。