相続税の配偶者控除のデメリット|目一杯使わない方がいい?

 

 

相続税配偶者控除デメリット

目一杯使わない方がいい?

 

 

今回は、相続税の配偶者控除にはデメリットもあるので、この制度は目いっぱい使わない方がよいというお話です。

 

まずは配偶者控除の概要を簡単に説明します。相続税の配偶者控除というのは、戸籍上の夫婦のみに適用される制度で、配偶者の法定相続分もしくは1億6,000万円のどちらか大きい額までは相続税がかからないという制度のことを言います。

 

注意点としては、相続税の申告期限までに遺産分割協議を完了させなければならないことがあります。また配偶者控除は自動的には適用されませんので、事前に申告する必要があるということがあります。

 

 

なぜの配偶者控除は目一杯使わない方がいいの?

 

さてここからが本題です。なぜ相続税の配偶者控除は目一杯使わない方がよいのでしょうか?

 

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例えば、父親の相続が発生し相続人が母親と子供の場合、共同相続人である子供が「夫婦で築き上げてきた財産だからお母さんが全部相続しなよ」と提案し、母親も「全相続財産が1億6,000万円以下だし全部相続したとしても相続税がかからないから」という理由で、子供がしてくれた提案を受け入れるとします。

 

このケースの場合、相続税がかからなくてよかったと思いたいところですが、実はここに落とし穴があります。

 

歳の差婚も珍しいことではありませんので一概にはいえませんが、突然の事故や病気が原因で亡くならない限り、夫婦の相続はあまり間を置かずに発生します。

 

つまり、配偶者控除によって、残された配偶者が多めに相続したとしても、財産にさほど手を付けずに亡くなる可能性が高いのです。この説明だけではよくわからないと思いますので、具体的に事例をあげながら説明していきます。

 

 

事例で検討!

 

例えば、父親が亡くなったことで相続が発生し相続人が母親と息子、娘の場合、全相続財産が1億6,000万円以下であり、子供たちも納得してくれたため、母親が配偶者控除を利用して全相続財産を相続したとします。

 

そして5年後に母親の相続が発生し、息子と娘が相続人となり遺産分割協議を進めていきます。母親の相続財産を相続するといっても、その中には父親の相続財産も含まれます。その分相続財産が多くなるのです。

 

つまり、何が言いたいのかというと、それだけ相続税を支払う確率が高くなるということです。父親の相続財産と母親の相続財産を合計した総額は同じであっても、相続方法によっては累計で支払う相続税に大きな差が生じてくるのです。

 

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配偶者控除を目一杯使った場合とそうでない場合の差は?

 

では、具体的に数字を使って、どれだけ支払う相続税に差が生じるのかをみていきましょう。

 

それではまず具体的に、配偶者控除を目一杯使ってしまうのと使わないのとでは、相続税の総額にどれほどの差が生じるのかをみていきます。

 

今回の事例では、父親、母親、息子、娘という家族構成のご家庭で考えてみます。また、父親の所有している財産の総額が1億円、母親が5,000万円と仮定して話を進めていきます。

 

父親に相続が発生すると、相続人は母親、息子、娘となり、1億円から基礎控除額を差し引いた5,200万円に対して相続税が発生します。相続税の計算は5,200万円を法定相続分で分割し、その額を速算表に当てはめ、相続人が各々納税することになります。

 

 

配偶者控除を目一杯使わないケース

 

まずは配偶者控除を目一杯使わないケースから考えてみます。父親の相続が発生し遺産分割協議の結果、母親が6割、子供たちが2割ずつ相続財産を取得するとします。すると、納める相続税は母親が378万円、子供たちがそれぞれ126万円となります。

 

ここで、母親は配偶者控除が使えます。なので、母親は法定相続分以上の財産を取得していますが、相続財産額は1億6,000万円を超えていませんので、相続税は納めなくてもよいということになります。

 

つまり、父親の相続、一次相続において支払う相続税は、子供たちがそれぞれ126万円、合計352万円となります。

 

そして、母親が亡くなったことによる相続、二次相続が発生するとします。母親の相続財産は父親から相続した財産6,000万円と、母親自身の財産5,000万円、ここから母親が生前に使った1,000万円を差し引いて1億円となります。

 

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相続人は息子と娘のみで1億円から基礎控除額を差し引いた5,800万円に対して相続税が発生します。法定相続分に分割したとして相続税を計算すると、それぞれ385万円、合計770万円となります。

 

つまり、一次相続と二次相続の累計で支払った相続税は1,122万円となります。

 

 

配偶者控除を目一杯使うケース

 

続いて、配偶者控除を目一杯使うケースを考えてみます。

 

父親の相続が発生し遺産分割協議の結果、母親が全相続財産を取得するとします。母親は配偶者控除が使えますから、相続税は納めなくてもよいということになります。つまり、父親の相続、一次相続において相続税は一切発生しないことになります。

 

そして、母親が亡くなったことによる相続、二次相続が発生するとします。母親の相続財産は父親から相続した財産1億円と、母親自身の財産5,000万円、そこから母親が生前に使った1,000万円を差し引いて1億4,000万円となります。

 

相続人は息子と娘のみで、1億4,000万円から基礎控除額を差し引いた9,800万円に対して相続税が発生します。法定相続分で分割したとして相続税を計算すると、それぞれ780万円、合計1,560万円となります。

 

配偶者控除を目一杯使わなかった場合では、累計の相続税額は1,122万円、配偶者控除を目一杯使った場合では、累計の相続税額は1,560万円、その差は約450万円にもなります。

 

さらに、配偶者控除を目一杯使う場合では、一次相続では相続税は一切発生しませんが、その分二次相続で一気に780万円を納税しなければならないことになります。

 

ということで、どうして配偶者控除を目いっぱい使わない方がよいという見解があるのかがお分かりいただけたかと思います。

 

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