再転相続で特別受益はどうなる?
特別受益証明書とは?
今回は特別受益と再転相続についてのお話です。特別受益というのは、相続の際に生計の資本など一定の事情によって生前贈与などを受けているときには、その生前にもらった分を相続でも公平のために加味してその分減らそうという制度になります。
一方、再転相続というのは何かというと、事例で紹介しますと・・・
まず父親(被相続人)が亡くなったときに、子供AとBがいたとします。
その兄弟で本来は父の相続について遺産分割などをしなければならなかったところ、その遺産分割の話がまとまる前に子供Bが死亡してしまい、さらにその相続人としてBの子供、つまり父親から見れば孫Cが出てきたというようなケースです。
このようなケースを再転相続といいます。こうした再転相続と特別受益が両方問題になるケースでは、どのように処理をするのかという話がされます。
再転相続と特別受益を事例で検討!
例えば、父親が子供Bだけに対して、生計の資本として、住宅の資金とかそういったものとして1,000万円の生前贈与をしていたという場合です。
Bさんが生きているときにAさんと相続の話し合いがされるときには、当然1,000万円の生前贈与は特別受益としてBの取り分から減らすべきだという話がされます。
ところが、そのような話ができる前にBさんが死亡してしまって、相続人がBさんの子供に代わってしまったというときにどうなるかという話が問題にされることがあります。
つまり、特別受益に関しては、共同相続人がもらっている、生前贈与を受けているときに問題視されるものですから、立場が代わってしまった、入る人が代わってしまったというときにどのような処理がされるのかということが問題になるのです。
ただ、このような再転相続の場合に関して、Bさんがすでに生前贈与として受けていた、特別受益として該当すべき話が合ったという場合、再転相続が発生したときには、このような受益についても、当然ながらその子Cがそのまま引き継ぐという話がされやすいです。
実際にはこのような再転相続であっても特別受益は変わらず主張され、その分の修正がされるというのが今の考え方、実務になります。つまり、特別受益の主張は続くということですね。このような判断がされている裁判例もあります。
ということで、特別受益に関して単純な再転相続が起きた時には、通常の相続と同じように扱われるということになりますので、この点は頭に入れておいて下さい。
特別受益証明書とは?
続いて、特別受益証明書についてのお話です。特別受益証明書というのは何かというと・・・
相続のときの登記を移す方法の1つとして、特別受益証明書、あるいは相続分不存在の証明書などと言われるものが使われることがあります。例えば、父親と母親、子供2人という家族関係で父親が亡くなった場合です。
父親から1人の子供が相当額の生前贈与を受けていた、特別受益をもらっていたということで、この特別受益分をもうすでに相続分としてもらっていて今回の相続では取り分がない、ということにみんなで納得していて争いがないようなときの話です。
つまり、特別受益に争いがないというケースですね。そのようなときに父名義の不動産があって、その登記を母親(妻)ともう1人の子供の名義に移すというときにどのような方法があるのかというと・・・
まず最もよくあるのが遺産分割協議書を作成するケースです。すでにもらった子供に関しては取り分がゼロであるというような遺産分割協議書を作成するということですね。
それ以外の方法は?
またそれ以外に、すでにもらっているので子供としては家庭裁判所に申請して相続放棄をするということもあります。このような方法で、母親ともう1人の子供の共有の登記に移すということもできます。
一方、それ以外の方法として、特別受益証明書を作成するということがあります。
例えば、遺産分割協議書をわざわざ作成するのが面倒だとか、相続放棄手続きを家庭裁判所に申請したり照会に回答したりするのも面倒だ、というようなときには「特別受益証明書」というものを作成します。
具体的には、「実際にはもう自分が特別受益としてもらっています、今回の相続では相続分はありません、不存在です」という特別受証明書を作成して印鑑証明書を付けることで、母親やもう1人の子供によって登記を移せるという流れになります。
流れとしてはこのような形になりますので、簡便な方法としてこの特別受証明書を何人もの相続人に発行させて、1人に登記をまとめるという方法もとられたりします。
ということで、特別受証明書の作成という方法もありますので、登記移転の際には念のためチェックしておいて下さい。