自筆証書遺言の書き方|文例・書式・形式は?

 

 

自筆証書遺言書き方

文例・書式・形式は?

 

 

今回は自筆証書遺言の書き方についてのお話です。まずは自筆証書遺言の一番簡単な文例(書式・形式)をみてください。

遺言書

 

私の全ての遺産を妻結衣に相続させる。

 

平成○○年○月○日

 

東京都新宿区○○四丁目○番○号

 

       新垣 太郎(印)

 

  昭和○○年○○月○○日 生まれ

遺言書から始まって生年月日まで全て自書、自分で書いて日付も書いて印鑑を押します。この印鑑は認印でも実印でも、場合によっては拇印でも構いませんがこれが押してなければいけません。

 

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ただし、遺言書が本人によって書かれたかどうかを争う裁判になった場合、実印の方が間違いがないとされています。この一番最初の「遺言書」というのは書いても書かなくても構いません。ですが、書いておいた方が一目してわかりますので、書くことをおすすめしています。

 

ただ、過去実務において、私はこのような遺言書を見たことはありません。というのは、この程度でしたらわざわざ相談に見えることもありませんし、「誰にいくらいくら」と書きたいのが本音だからです。私は遺言相談で依頼者とお会いするときは、できるだけ依頼者の自宅に伺うようにしています。

 

それには理由があるのです。あなたは自分の財産を今すぐに言えるでしょうか?普通の人は、今この家に住んでいる自宅と○○銀行に○○円くらいの普通預金があって、こっちの銀行には○○円の定期預金があって、○○生命に○○円くらいの生命保険に入っていて、えーっと…

 

と、だいたいこんな感じです。車とかNTTの電話加入権などは財産とは思っていなかったりします。ましてや住宅ローンの残高、つまり借金も財産とは思っていません。

 

 

具体的な自筆証書遺言の書き方は?文例・書式・形式は?

 

遺言書に書く内容は、財産を特定できる書き方が必要です。例えば、預金は以下のような形式(書式・文例)で書きます。

預貯金
 @株式会社○○銀行○○支店 普通預金
    口座番号 12345678番

 

 A株式会社○○銀行○○支店 外貨定期預金
    口座番号 91011121番

 

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株式会社○○銀行の「株式会社」も必要です。そして口座番号まで指定します。ただこの場合、残高は必要ありません。相続開始までに残高が変わることがありますから、大体の金額を書いておいても構いませんが、あまり金額は意味がありません。

 

一方、これよりややこしいのが不動産です。形式(書式・文例)は以下のようにします。

 

不動産(土地)
 所在地 東京都新宿区○○ ○丁目
 地番  ○番
 地目  宅地
 地積  100.80u

 

不動産(建物)
 所在  東京都新宿区○○ ○丁目○番地
 家屋番号 ○○番
 種類  居宅
 構造  木造ストレート葺2階建て
 床面積 1階 40.30u 2階 35.03u

 

不動産は土地と建物を別々に書くことが必要です。特に自宅の場合に多いのは、自宅の住所を書いてしまって失敗する文例です。不動産の表示方法というのは、登記簿のとおりに書くのが望ましいです。

 

登記簿上の住所、これを所在とか地番とか言いますが、一般的な住所とは違うところも多いです。

 

例えば、東京の世田谷とか中野とか、そういうところにも違う表示が見受けられますし、横浜などでもかなりあります。不動産の所在というのは、昔の地番であることが多いです。

 

そして、今の住所はその地番というものを序列化して住居表示になっているところが多いのです。

 

地方に行けば行くほど、まだ住居表示化が進んでいないところがあって同じところが多いです。一方、都会になってきますとだいぶ違ってきますので確認することをおすすめします。

 

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不動産の表示方法(書き方)の注意点は?

 

不動産の表示方法は、土地と建物でも違います。なので、自宅にある権利書や登記簿謄本、あるいは登記事項証明書、こういったもので確認が必要になります。もしなければ、法務局に行って取り直すということになります。

 

例えば長男に「自宅を譲る」と書いても、それを納得しない次男から「自宅とは建物だけだから、建物だけしか書いていない、土地は自分のものだ」というように主張されることもあります。

 

それから、口座の確認なども必要になりますので、その場合は普通預金の通帳など、そういうものを確認させていただきます。もちろん、表紙だけです。中までは拝見しません。

 

ちなみに、自筆証書遺言の相談コーナーには、一般的に通帳とか登記簿を持ってくる人はいません。ましてや住宅ローンやマイカーローンの返済よ定評などを持ってくる人もいません。なので、自宅に伺うということになるのです。

 

 

預貯金の表示方法(書き方)の注意点は?

 

有効な遺言がある場合は、そのとおりに分割されて、その遺言書を金融機関に持っていって口座名義の変更を行ったりするわけですが、そこに書かれている支店名や口座名に間違いがあると手続きをしてくれません。

 

ですから、「株式会社○○銀行○○支店」まで必要だということになります。

 

不動産の表示も同じです。きちっと正確に書かないで曖昧な表現をしたために、例えば「自宅」などそういった書き方をしたために、その内容の有効・無効をめぐって相続人同士が裁判を起こす、という事例を何度も見てきました。

 

もちろん、その場合は弁護士さんにお願いすることになります。

 

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とはいえ、私が自宅に伺っても思い出す手掛かりになることはあまりありません。もちろん質問はします。

 

「保険は入っていませんか?」などの質問はしますが、それは私が言ったからといって急に思い出すものではありませんからね。ですから、事前の準備が必要になります。

 

 

財産目録の作り方は?

 

以下のようなリストに従って、自分の財産を思い出した時に書きだして、財産目録を作っておく作業が重要になります。

 

■プラスの財産
・預貯金
・不動産
・有価証券(株式・社債等)
・動産(家具・什器・書画・骨董・貴金属)
・自動車
・生命保険
・死亡退職金
・電話加入権
・売掛金債権(未回収の利益)
・裁判上の損害賠償請求権
・特許権・実用新案権・意匠権・商標権

 

■マイナスの財産
・債務(借入金・支払手形など)
・公租公課(未納の税金)
・保証債務(他人の保証人)

 

市販のエンディングノートなどを活用してもいいですし、インターネット上にある無料のエンディングノートをダウンロードしてそれを印刷して使うのもいいと思います。とにかく思い出した時にメモするのが大切です。

 

ちなみに、生命保険は原則としては相続の対象にはなりません。受取人固有の財産だからです。

 

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これに対して、死亡退職金は相続財産になる場合とならない場合がありますので、これは会社に問い合わせて、規約というものを見て調査して確認することをおすすめします。

 

それから、忘れがちなのがマイナスの財産です。つまり借金です。

 

相続とは被相続人(亡くなった人)の権利と義務の一切を相続人が引き継ぐ制度です。プラスだけではなく、マイナスの財産も引き継ぎます。そして、プラスよりマイナスが多いと相続人は苦労します。そうならないように、民法では相続放棄ができるようになっています。

 

ですが、一旦相続してしまいますと後から放棄ができませんので、トータルしてプラスになるのかマイナスになるのか、大体を予測するために、遺言書の中で借金があることと大体の金額を書いた方が親切だと思います。

 

このマイナスの財産を遺言でなくても、例えばエンディングノートなどに書いておいても構いません。

 

 

自筆証書遺言の書き方|文例・書式・形式は?まとめ

 

自筆証書遺言は全部自分で書く、日付と押印を忘れない。それに加えて、マイナスの財産は忘れがちですから、できれば記載しておきます。もちろん、エンディングノートに書いても構いません。その理由は、相続放棄や限定相続に関係してくるからです。

 

それから、遺言書は何通書いても構いません。またいつでも自由に撤回することができます。例えば、公正証書遺言をせっかく作ったのだけれど、その後に自筆証書遺言で別の分け方を指定しても構いません。その際には、新しい日付が優先されます。

 

なので、書いた日を特定できるように書くことが重要です。「○年○月吉日」はダメですが「○年の誕生日」なら特定できますのでOKということです。

 

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自筆証書遺言の検認の注意点は?

 

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

 

家庭裁判所では、形式的に民法どおりの書き方をしているかどうかを確認して、その後に予想される隠滅や改ざんを防ぐために控えを残して、もし裁判まで進んでしまった場合に証拠として残る、そういう制度です。

 

この検認をしてもらうには、相続人全員の戸籍謄本などと、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本などの書類を添付して、さらに原則として出頭する必要があります。なので、相続人にとっては大変な負担になります。

 

この書類は行政書士などが取得できる書類ですが、相続人の負担を少なくするために、遺言書を書くときに取得されることをおすすめします。

 

 

金額の書き方(文例・書式・形式)の注意点は?

 

金額の書き方にも注意が必要です。縦書きの場合、1と2と3と10は普通の漢数字ではなく多角文字「壱、弐、参、拾」の方が改ざんを防ぐことができます。

 

例えば、普通の漢数字の「二」は少し書き足すと「四」にもなってしまいますし、「一」は簡単に「十」に改ざんできます。

 

こうしたことを防ぐためにも、遺言や小切手などには多角文字が使われます。以下のように、「拾、百、千、万」などの単位も入れておくと改ざん防止につながります。

 

■125万円=壱百弐拾五万円
■355,000円=参拾五万五千円

 

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